火力発電の増強で夏の供給力に余裕、東京は猛暑でも予備率4.9%以上電力供給サービス

東京電力が7月〜9月の需給予測と電源別の供給力を公表した。猛暑だった2010年度と同様の最高気温を想定しても、電力の予備率は停電の危険性がある3%を十分に上回る見通しだ。最新の火力発電設備を相次いで稼働させたことで、原子力に依存しない電力供給体制が定着してきた。

» 2014年05月21日 13時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 東京電力の予測では、2014年の夏の最大電力は猛暑の場合で5320万kW、平年並みだと5160万kWになる見通しだ。これに対して供給力は8月に最大で5612万kWを確保する(図1)。需要に対する供給力の予備率は猛暑の想定でも4.9%以上に、平年並みでは8.0%以上になる。

図1 東京電力の2014年夏の需給見通し(画像をクリックすると拡大)。出典:東京電力

 9月は供給力を下げて予備率が3.6%まで低下する可能性を見込んでいるものの、供給力を引き上げる余力を残しているために電力不足の心配はない。しかも今夏の供給力からは関西電力などに融通を予定している50万kW以上を差し引いている。それだけ東京電力の供給力には余裕がある。

 供給力の中身を電源別に見ると、前年の実績から大幅に増えるのが揚水式の水力発電で、170万kWの増加を想定している(図2)。6月に営業運転に入る「葛野川(かずのがわ)発電所」の4号機(40万kW)が大きく貢献する。

図2 供給力の内訳(画像をクリックすると拡大)。出典:東京電力

 揚水式の水力発電は夜間の余剰電力を使って、川の水を下流から上流に引き上げて昼間に発電する。現在は火力発電の余剰分を利用するために、火力の供給力を十分に確保できることが前提になる。

 東京電力は7月までに最新の火力発電設備を相次いで営業運転する予定だ。LNG(液化天然ガス)を燃料に使ったコンバインドサイクル方式により、「千葉火力発電所」で50万kW、「鹿島火力発電所」で44万kWが増加する(図3)。これをすべて加えれば、今夏の火力発電の供給力はさらに引き上げることが可能になる。

図3 主要な電源開発計画(運転開始年月は平成で表記)。出典:東京電力

 前年の2013年の夏の実績では、東京電力管内の最大電力は5093万kWで、その時の供給力は5494万kWだった。予備率は7.9%である。その後も企業や家庭の節電対策が進み、一方で新電力に切り替える自治体が増えていることから、2014年の夏の電力需要は減少する可能性が大きい。最大電力は東京電力の予測を下回って、よほど供給力を引き下げない限り予備率が5%を割り込む状況にはならないだろう。

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