首都圏でも木質バイオマス発電が拡大、埼玉県で年間2万トンを燃料に自然エネルギー

都心から60キロメートルの距離にある埼玉県の秩父市で、新たに木質バイオマスを活用する発電プロジェクトが始まる。早稲田大学の研究室から誕生したベンチャー企業が3社と共同で進める。地域の間伐材などを年間に2万トン利用して、発電規模が2MWの設備を運転する計画だ。

» 2014年06月16日 13時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 秩父市は埼玉県の西部にあって、市の面積の87%を森林が占めている(図1)。森林から出る間伐材などを木質チップに加工して、2007年から秩父市の事業として木質バイオマス発電所の運転を続けている。新たに民間企業4社による木質バイオマス発電のプロジェクトが市内で動き出す。

図1 秩父市の風景。出典:秩父市役所

 プロジェクトの中心になるのは「早稲田環境研究所」で、2003年に早稲田大学の研究室から誕生したベンチャー企業である。さらに長野県で木質バイオマス発電を計画中の「かぶちゃん電力」のほか、かぶちゃん電力と連携して市民ファンドを運営する「ソーシャルインパクト・リサーチ」、埼玉県でガス事業を展開する「サイサン」の3社がプロジェクトに加わる。

 導入する発電設備は2MW(メガワット)の規模を想定している。地域で発生する間伐材や剪定材、建築廃棄物などをチップに加工して燃料に使う。1日あたり60トン、年間で約2万トンの木質チップを利用する予定である。発電した電力は地域内に供給して、地産地消型のエネルギーシステムの構築を目指す。電力のほかに熱も供給できるようにする。事業の資金は市民ファンドで調達する方針だ。

 プロジェクトの参加企業4社は今後、国や埼玉県が実施してきた実証事業の成果をもとに発電事業の詳細を詰めていく。埼玉県では地域の特性を生かした「エコタウンプロジェクト」が2011年から始まっていて、秩父市を中心に西部の中山間地エリアではバイオマスエネルギーの活用に力を入れている。

図2 埼玉県が推進する「エコタウンプロジェクト」のエリア別モデル(画像をクリックすると拡大)。出典:埼玉県環境部

 秩父市では「ちちぶ元気村バイオマス発電所」が115kWの発電規模で2007年から電力を供給している。全国で初めて木質バイオマスを利用したガスコージェネレーション設備を導入して、電気と温水を地産地消するシステムを構築した。新プロジェクトが実現すると地産地消の規模が一気に拡大する。

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