地面に電流が漏れる事故、そこから復旧しやすい装置蓄電・発電機器

オムロンは、太陽光発電システム向けの地絡過電圧継電器(OVGR)の新製品3モデルを2014年10月に発売する。太陽光発電システムの設計が容易になり、部品コストを低減できる。2015年4月に導入される新規制に対応することで運用・保安コストの削減にも結び付く。

» 2014年07月29日 15時50分 公開
[畑陽一郎,スマートジャパン]

 オムロンは、太陽光発電システム向けの地絡過電圧継電器(OVGR)である「K2ZC-K2GV-N□C」を2014年10月に発売すると発表した*1)

 発売する地絡過電圧継電器は、ユニットタイプの「K2ZC-K2GV-NUC」と表面取り付けタイプの「K2ZC-K2GV-NPC」、埋め込み取り付けタイプの「K2ZC-K2GV-NDC」(図1)。価格はユニットタイプが5万1000円、その他の2タイプが6万円。

*1) 2014年7月30日〜8月1日の3日間、太陽光発電に関する総合イベント「PV Japan 2014」で展示する予定。

図1 発売するOVGR 3製品 出典:オムロン

地絡事故とは

 ここでいう地絡とは、事故などにより電線などを通る電流が地面との間で短絡(ショート)してしまう現象を指す。太陽光発電システムを高圧連系した系統側で地絡事故が発生した場合、系統を保護するためにOVGRの設置が法令で義務付けられている。OVGRが動作すると、パワーコンディショナーから送られてくる電力が止まる仕組みだ。

 地絡事故から復旧した場合には、発電を再開(再連系)するだろう。ただし、地絡復旧後に再連系する際には、電力会社からの許可を待たなければならない場合がある。そのため、OVGRを手動で操作できるようにしなければならない。これまでのOVGRは自動復帰機能を備えており、手動復帰回路(キープリレー回路)を個別に設けることでこのような状況に対応してきた(図2)。手動復帰の運用が太陽光発電システムを設置する地域や管轄の電力会社により異なっているためだ。電力会社との協議によって太陽光発電システムの設置後に再工事をする場合もあり、コストアップ要因になっていた。

図2 OVGRと手動復帰回路の関係 出典:オムロン

 新製品では、自動復帰動作と手動復帰動作をスイッチ切り替えで選択できるように改良。個別の外付け回路が不要になり、部品コスト低減につながる。電力会社との協議によって手動復帰動作が必要になった場合も、スイッチ操作で対応できる。同社は自動/手動復帰切り替えが可能な製品は業界初だと主張する。

 新製品には系統監視機能も搭載した(図3)。遮断機の開閉状態を把握することで、系統から遮断された状態に対して素早く対応できる。発電ロスが起こっている時間を短くできることで、発電量(売電)を最大化できるという。

図3 新製品の系統監視機能 出典:オムロン

 この系統監視機能があることで、保安に要するコストを最大で3分の1低減できるという。

 2015年4月から太陽光システムの交流側回路(パワーコンディショナーから遮断機まで)の保安頻度が強化される。従来は6カ月に1回だった保安頻度が、新規制では最大で2カ月に1回になる。この規制には例外があり、技術員が必要に応じて発電所の現場で運転状態の監視などをおこなう随時監視制御や、技術員が常駐する常時遠隔監視制御が可能であれば、頻度が1カ月伸びる。2カ月に1回という頻度が3カ月に1回となる。新製品に備わっている系統監視機能は随時監視だと見なされるため、例外に当てはまる形だ。

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