今後は発電事業の用途でも燃料電池の導入が進んでいく。その中でも実現性が高いのは、燃料電池とガス火力発電を組み合わせた「トリプルコンバインドサイクル発電」である。通常のガスタービンと蒸気タービンによるコンバインドサイクルに加えて、ガスタービンの前段に燃料電池を組み込んで3段階で発電することができる(図9)。
3段階の発電効率を合わせると70%に達する。発電効率が高い分だけ燃料が少なくて済み、CO2の排出量も減る。火力発電プラントメーカーの三菱重工業の計画では、出力が数10万kW級のトリプルコンバインドサイクル発電プラントを2020年代に実用化できる見通しだ(図10)。
次のステップとしては、水素だけを燃料にして発電する「専焼発電」の期待も大きい。水素を再生可能エネルギーで作ることができれば、燃料を含めてCO2フリーの発電所になる。海外では専焼発電の実証実験が始まっていて、イタリアの電力会社では発電能力が1万2000kWある商用レベルの水素専焼発電プラントを運転中だ。
水素発電でもコストが課題になる。2011年に政府の委員会がまとめた電源別の予測によると、燃料電池の発電コストは2030年にガスコージェネレーションよりも低くなる。電力1kWhあたりのコストは19円前後になって、発電と同時に排出する熱の利用価値を考慮すると11円台まで下がる(図11)。
このコスト予測の中では、火力発電が燃料費の増加で2030年に向けて上昇していく。石炭火力とガス火力は1kWhあたり6円前後が10円台に、石油火力は2030年に38円台まで高騰する。そうなれば燃料電池を使った水素発電の実用性が一段と高まり、化石燃料の低減に拍車がかかる。
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