純水素の燃料電池、東芝など4社が開発自然エネルギー

岩谷産業と東芝、長府工産、山口リキッドハイドロジェンの4社は、純水素を利用した燃料電池システムの研究開発を2014年8月から開始、2017年までの4年間で進める。家庭用の出力0.7kWの機種と、業務用の出力数kWの機種の2種類を作り上げ、商用水素ステーションなどに設置する。

» 2014年08月11日 11時20分 公開
[畑陽一郎,スマートジャパン]
図1 山口県周南市の位置

 岩谷産業と東芝、長府工産、山口リキッドハイドロジェンの4社は、純水素を利用した燃料電池システムの研究開発を2014年8月から開始する*1)。2017年までの4年間で進める。

 「今後、水素ステーションが増えていき、水素供給源が多くなっていく。そのため、水素だけから電力や熱を作り出す燃料電池システムが必要になる」(東芝)。4社が開発する燃料電池システムは2種類。1つは出力0.7kWの家庭用、もう1つは出力数kWの業務用だ。2014年12月から、山口県周南市など各地の商用水素ステーションに順次設置する計画だ(図1)。

 「周南市の水素ステーション内に燃料電池システムの一式を設置する。作り出した電力でステーションの事務所の電力を賄うことを考えている。現在のガソリンスタンドにはコンビニエンスストアが併設されているものもある。業務用燃料電池はこのような場面に役立つだろう」(岩谷産業)。

 「2011年から北九州市八幡東区の東田地区で始まった『HySUT 北九州水素タウンプロジェクト』では当社が開発中の純水素型燃料電池を利用している。今回のプロジェクトでは、まずは経験のある家庭用の燃料電池の開発設置を進め、その後、新規開発となる業務用に進む」「利用する技術は固体高分子形燃料電池(PEFC)だ」(東芝)。

*1) 山口県が2014年4月に公募した「平成26年度 やまぐち産業戦略研究開発等補助金」の対象。研究開発・実証事業のテーマは「世界初 純水素型燃料電池コジェネレーションシステムの開発及び水素需要の拡大」。

水素だけで動かす技術が必要

 4社の分担は以下の通り。山口リキッドハイドロジェン*2)が研究開発・実証事業の全体をとりまとめ、実証試験を実施する。他の3社は機器を開発する。東芝は純水素型燃料電池、長府工産は純水素ボイラー型貯湯ユニット、岩谷産業は水素バーナーを開発する。

 4社が開発するシステムの全体像は、都市ガスを利用して発電し、お湯を作る「エネファーム」とよく似ている。エネファームでは都市ガスを取り入れ、まず内部で水素を作り出す(改質)。その後、内蔵する燃料電池に水素を供給し、電力と熱を得ている。熱を使って湯を得、貯湯タンクに蓄える。エネファームには都市ガスを使って追い炊きする機能が備わっている。

 「エネファームには水素系統の燃料電池と都市ガス系統の追い炊きの2系統がある。今回の開発ではこれを水素だけに1本化する」(岩谷産業)。長府産業と岩谷産業が開発するのは、この貯湯タンク周辺の機材だ。

*2) 山口リキッドハイドロジェンは岩谷産業とトクヤマが2011年に設立した企業。トクヤマが苛性ソーダ(水酸化ナトリウム)を製造する際、副次的に発生する水素(副生水素)を受け入れて、精製、液化、貯蔵する。製造した液化水素は全量岩谷産業が引き取る。「今回の実証実験では液体水素は利用しない」(岩谷産業)。

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