京都の伝統家屋をスマート化、どうやって?スマートハウス(2/2 ページ)

» 2014年08月13日 14時00分 公開
[畑陽一郎スマートジャパン]
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どのような改修を施したのか

 改修の内容は、大きく2つに分かれる(図5)。エネルギー関連設備の導入と、主に熱性能に関係する受動的な建築仕様の導入だ。

 まず、太陽光発電システムを南側の屋根面に2.28kW導入できた。街並みの景観と調和しつつ、利用できるということだ。「太陽光発電システムの設備全体を京セラソーラーコーポレーションが提供した。ただし、太陽光発電の見える化などは日新システムズのHEMSを用いる」(京セラ)。HEMSは太陽光発電以外にも、住宅内の電力とガスの消費量や温湿度を計測し、エネルギーの見える化を担う。

 エネファームでは大阪ガスが協力した。発電効率と熱回収効率を合計すると、ガスが持つエネルギーの95%を利用できる設備だ*4)。「太陽光発電システムとはダブル発電の扱いになる」(京セラ)。今回の住宅は連棟住宅であり、室外に設置するエネファームの導入は難しかったが、小規模ながら庭スペースがあったことから、庭の景観を乱さないように配置できたという。

 空調は床下設置とした。京都の冬季の底冷えを防ぐ温風を得るためだ。

*4) 大規模発電所ではガスが持つエネルギーのうち、41%しか利用できない。送電ロスはもちろん、排熱をあまり利用できないことが効率の低い原因だ。

図5 改修の内容 出典:京都市

 受動的なエネルギー対策は主に4点ある。住宅に出入りする熱の入り口のうち、最も大きいのは窓だ(関連記事)。そこで、複層ガラスを導入して断熱性を高めた。照明に掛かる電力を抑えるため、屋根面から採光できるトップライトを設けた。屋根自体にも断熱改修を施し、耐震補強も追加した。京町屋で使う土壁も断熱改修を加えて残した。

1年間生活して効果を測定

 「今回の改修は対象が伝統家屋であること、複数の省エネルギー機器や(受動的な)窓や壁の改修を含んでいることから、エネルギー消費量などの削減目標を事前に立てていない。その代わり、2015年2月から1年間、居住者に協力を依頼して効果を測定する」(同室)*5)

 電力とガスの使用量の他、室内外の温度湿度を計測し、省エネ効果を分析する他、居住者へのアンケート調査も行う。

 今回の改修では、京都市次世代環境配慮型住宅エネルギー実証協議会が事業主体となった。協議会には大阪ガス、冨家建築設計事務所、日新システムズ、八清、京都高度技術研究所、京都市が参加している。大阪ガスはエネファームを供給、冨家建築設計事務所が全体の設計を担当し、日新システムズはHEMSを提供した。住宅を所有し、2014年8月30日から販売するのは八清だ。京都高度技術研究所は京都市の外郭団体であり、スマートシティ京都研究会で京都市と連携して研究・企画を進めてきた。

 「今回の事業の予算は2013年度と2014年度を合わせて約1100万円。2015年度からは新たに実証研究(計測分析)の予算を組む予定だ」(京都市産業観光局新産業振興室)。

*5) 省エネ効果の前提となる建物外壁や内壁の熱伝導率や熱損失率は京都大学大学院工学研究科(鉾井修一教授、伊庭千恵美助教)の協力を得て、改修前後に計測、分析する。

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