電力会社に依存しない供給計画へ、広域機関が全事業者をとりまとめ動き出す電力システム改革(15)

2016年度から電力の供給計画を作成する仕組みが変わる。従来は電力会社が地域ごとに立案していたが、今後は「電力広域的運営推進機関」が全国規模の供給計画をとりまとめる。小売の全面自由化に伴って、発電・送配電・小売の全事業者が年間計画を作成して広域機関に提出することになる。

» 2014年08月14日 15時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

第14回:「電力会社から簡単に契約変更、小売事業者がワンストップで手続き」

 電力システム改革の第1弾として2015年4月に「電力広域的運営推進機関」(略称:広域機関)が業務を開始する。最大の役割は全国規模の需要と供給力を適切に調整することで、その基本になるのは毎年度の供給計画である。

 従来は電力会社が地域別に計画を作成していたために、ともすれば需要と供給力を過大に見積もる傾向が強かった。2016年度から広域機関が全国レベルの需要を予測して、それをもとに送配電事業者(系統運用者)が地域単位の需給計画を作成する。同時に発電事業者と小売事業者が電源の建設・運転や調達計画を進めて供給力を確保していく体制だ(図1)。

図1 全国規模の需給予測と供給力確保の実施イメージ(画像をクリックすると拡大)。出典:資源エネルギー庁

 発電・送配電・小売の各事業者は広域機関に対して今後10年間と直近1年間の供給計画を提出する義務を負うことになっている。広域機関は全事業者からの計画をとりまとめて、国全体のほかに東・西日本別と地域別の計画を作成して国に提出する流れになる(図2)。

図2 供給計画の作成手順(画像をクリックすると拡大)。出典:資源エネルギー庁

 これまでは電力会社が地域別に作成した供給計画を国が集約してきた。調整役は資源エネルギー庁と有識者による委員会が担っていて、ほとんど電力会社の計画どおりの内容になっていた。電力会社の都合に合わせて需要と供給力を想定できるため、実態に見合わない過大な計画になりがちだった。

 新しい体制では、電力会社も発電・送配電・小売の各事業に分けて供給計画を作成する必要がある(図3)。従来よりも予測の精度を高めなければ、個々の部門の事業計画に影響が及ぶ。さらに電力システム改革の第3弾として発送電分離が実施されると、各事業の収支が明確に分かれて、それぞれの計画の実現性が厳しく問われることになる。

図3 各事業者が提出する供給計画の内容(画像をクリックすると拡大)。出典:資源エネルギー庁

 しかも調整役の広域機関には発電・送配電・小売の全事業者が加入して、供給計画の作成を含む業務全般に責任を負う。従来のように国と電力会社が中心になって作成した計画よりも実態に近い内容になるはずだ。

 2016年度の供給計画は2015年10月から作成に着手して、2016年3月までに各事業者が広域機関に計画を提出する(図4)。広域機関がとりまとめた全体の計画は国に提出して確定する流れである。2016年の夏には新しい枠組みで作られた需給予測をもとに、各地域で節電対策に取り組むことになる。

図4 毎年度の供給計画を作成する流れ(画像をクリックすると拡大)。出典:資源エネルギー庁

第16回:「小売全面自由化で発電事業者に規制、出力1万kW以上は届出制に」

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