昼は発電 夜は星、空港跡地で国内初の太陽光自然エネルギー

オリックスと九電工は2014年9月、空港跡地を利用した国内初の太陽光発電所「枕崎市枕崎空港跡地第一発電所・第二発電所」の運転を開始した。滑走路上に太陽電池モジュールを配置し、出力8.2MWを得る。両社は地域貢献策を3つ挙げており、そのうち1つが天文観測所である。

» 2014年09月03日 11時00分 公開
[畑陽一郎,スマートジャパン]
図1 鹿児島県枕崎市と発電所の位置

 オリックスと九電工は2014年9月、空港跡地を利用した国内初の大規模太陽光発電所「枕崎市枕崎空港跡地第一発電所・第二発電所」(枕崎市あけぼの町)の運転を開始したと発表した(図1、図2)*1)

 薩摩半島の南端に位置する枕崎空港の元滑走路と空港ターミナルビルを再利用した形だ。滑走路(約800m×約25m)の舗装をそのまま生かしており、管理運営の費用が少なくて済むという。

 設置面積は約12万9000m2。ここにハンファQセルズの太陽電池モジュールを3万3544枚設置した。モジュール出力は8.218MW。想定年間発電量は一般家庭約2550世帯分の年間消費電力に相当する918万5900kWhを予定する。なお、枕崎市の世帯数は約1万600だ。

*1) 図2では2つの発電所を区別できない。「九州電力と協議した結果、1つの系統に全出力を接続することができなかったため、系統の異なる2つの発電所に分けた形だ」(オリックス)。

図2 枕崎市枕崎空港跡地第一発電所・第二発電所の外観 出典:オリックス

赤字の空港を太陽光で有効利用

 枕崎空港は1991年に日本初のコミューター空港として誕生したものの、小型機の利用者数が伸びず、2003年に全航空会社が撤退。2012年度末には開港以来の累積赤字が8億3500万円に増えていた。このため、2013年3月末に空港を廃止、太陽光発電事業者に賃借することが決まった。

 入札により、オリックスと九電工が選ばれ、2013年8月に着工。九電工が設計・調達・建設(EPC)を進め、今後の管理運営(O&M)も担う。事業主は、オリックスと九電工が共同で設立した特定目的会社(SPC)であるKクリーンエナジーである。「賃借料と固定資産税を合わせると、枕崎市に支払う額は年間8500万円である」(オリックス)。固定価格買取制度(FIT)を利用して、2014年9月から20年間、九州電力に発電した電力を全量売電する。市の累積赤字も解消できる形だ。

発電できない夜間は天体観測

図3 設置した天体望遠鏡 出典:オリックス

 オリックスと九電工はメガソーラーの企画を市に提案する際、主な地域貢献策を3つ挙げていた。空港ターミナルビルの一部を用いたメガソーラーの見学、学習スペースを用意することが1つ。もう1つは、メガソーラーの管理運営業務の一部を第三セクターの空港管理会社である南薩エアポートに委託することだ。

 メガソーラーとしての取り組みで珍しいのは天文観測所の建設だ。「事業者が南薩エアポートに寄付金を渡し、南薩エアポートがシュミットカセグレン式*2)天体望遠鏡(図3)を購入した。口径は35cmである」(オリックス)。枕崎市は国内でも南に位置するため、本州では水平線に隠れて見えない星も観測できる。周囲は平たんな田園であるため、天体観測に適している。

*2) シュミット補正レンズと2枚の球面鏡を用いる反射屈折式望遠鏡。球面鏡を用いるため、大型の望遠鏡でも低コストで製造できる。光を2回反射させているため、鏡筒は短く、ずんぐりした印象を与える。図3の左上方向からドーナツ型のシュミット補正レンズを経由して光が入射、いったん、鏡筒の底部の主鏡(凹面鏡)で光を反射し、鏡筒の先端の小さな副鏡(凸面鏡)で再度光を反射、鏡筒中央から接眼レンズに光を導く。

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