「電気自動車・蓄電池・太陽光」、離島で作るエネルギーの環蓄電・発電機器(2/2 ページ)

» 2014年10月17日 19時00分 公開
[畑陽一郎スマートジャパン]
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蓄電池に実績がある住友商事

 同市が住友商事を選んだ理由は、大規模蓄電池について実績があるからだ。同社は日産自動車と共同で共同事業会社フォーアールエナジーを設立。2014年2月には大阪市の湾岸地域にコンテナ型の蓄電池を設置している(関連記事、図3)。

 大阪市で利用した蓄電池は、日産自動車「リーフ」が搭載するリチウムイオン蓄電池のリユース品。リーフ16台分を設置した。システムの規模は出力0.6MW、容量0.4MWhというもの。電気自動車(EV)の蓄電池を再利用した大型システムの実用化として世界初の試みだという。

図3 コンテナ型の蓄電池とリーフ 出典:住友商事

太陽光発電と組み合わせる

 上甑島の2カ所に蓄電池システムを導入する。「指定避難所隣接地」には、リーフ36台分に相当する大型リユース蓄電池(容量約600kWh)を導入する。出力約100kWの太陽光発電システムとも組み合わせる。

 「老人福祉センター」にはリーフ1台分の約17kWhのリユース蓄電池を導入、併設する太陽光発電システムの出力は約10kWだ。「指定避難所隣接地は規模が大きいため、蓄電池を島内の系統と接続する。老人福祉センターは系統から独立した構成にする」(住友商事)。

 「大型リユース蓄電池の形状は大阪市の事例とほぼ同じで、コンテナ型だ。リユース蓄電池の規模は小さいので、違う形状である」(同社)。運転開始後はフォーアールエナジーが開発した電力マネジメントシステムで常時出力を監視して、動作を制御するという。

 蓄電池の導入によって、甑島の環境はどのように変わるのだろうか。走行距離が短くても済む離島では、島内でエネルギーを自給できるEVが向いているだろう*2)。EVのリユース蓄電池が増えてくれば、再生可能エネルギーをより大量に導入できるようになる。つまり再生可能エネルギーの環が完成するのではないだろうか(図4)

*2) 薩摩川内市(本土側)には原子力発電所が立地するものの、同市は太陽光発電などの再生可能エネルギー導入にも熱心だ。策定した次世代エネルギービジョンに従って再生可能エネルギーのモデルを複数作り上げている(関連記事)。甑島に対してはEVレンタカーや超小型モビリティの導入などを進めている。

図4 リユース蓄電池の導入が再生可能エネルギーの「環」を作り出す 出典:住友商事

 大型リユース蓄電池の導入によって、島内の他の太陽光発電所の出力変動をどの程度吸収できるのか、今回の共同実証事業を進めていくなかで検証する。なお、大阪市の事例では10MWの太陽光発電所に対して、0.6MWの出力変動分を吸収できるという予測を立てている。

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