燃料電池バス=ミライ×2、電力供給能力が250kWhと大きい電気自動車(1/2 ページ)

トヨタ自動車と日野自動車は、燃料電池車「MIRAI(ミライ)」の技術を利用した燃料電池バス「トヨタ FC BUS」を開発。2015年1月9日から実用化に向けた実証試験を開始する。建物に電力を供給するV2H機能にも優れており、供給能力は250kWhもある。

» 2015年01月09日 07時00分 公開
[畑陽一郎スマートジャパン]

 トヨタ自動車と日野自動車は、燃料電池車「MIRAI(ミライ)」の技術を利用した燃料電池バス「トヨタ FC BUS」を開発。2015年1月9日から実用化に向けた実証試験を開始する*1)。「2015年3月31日までバス1台を実路線で運行する」(トヨタ自動車)。

 実証試験では、名鉄バス豊田営業所が運行事業者となって、とよたおいでんバスの豊田東環状線を走行する。運行区間は豊田市から三河豊田駅前。月曜日を除き、1日3往復運行する。「片道15〜16kmの区間だ」(トヨタ自動車)。水素の充填にはとよたエコフルタウン内の水素ステーションを利用する。

 図1に示したトヨタ FC BUSの外観を示す。日野自動車のハイブリッド ノンステップ路線バスをベースとした定員77人(26席)の大型バスだ。シャシーなどバス本体は日野自動車が担当した。全長10525mm、全幅2490mm、全高3340mm。

図1 トヨタ FC BUSの外観(クリックで拡大) 出典:トヨタ自動車

*1) 経済産業省は2010年度から「次世代エネルギー・社会システム実証事業」を豊田市など全国4地域で推進している。豊田市の事業は「豊田市低炭素社会システム実証プロジェクト」。トヨタ自動車は、FCバスによる公道走行試験および非常時における外部への電力供給実証を継続しており、今回は最終段階の実証試験である(関連記事)。

なぜバスが燃料電池なのか

 トヨタ自動車はMIRAI公開以前から、燃料電池車は長距離走行が必要な車や大型車に向き、電気自動車は短距離走行での利用や小型車に適すると主張してきた(関連記事)。これは走行距離を伸ばそうとして電気自動車が搭載する電池の数を増やす場合よりも、燃料電池車の水素タンクの容量を増やす方がコストの上がり方が緩やかになるからだ。トヨタ FC BUSはまさしく燃料電池車の中核となる車といえるだろう。

 トヨタ FC BUSのもう1つの「魅力」は、大量のエネルギーを搭載できること。建物などに電力を供給する「FCバスV2Hシステム」を内蔵している。「250kWhの電力を供給可能だ。災害時などには例えば避難所として使われる小学校の体育館に、5日間程度電力を供給できるだろう」(トヨタ自動車)*2)。最高出力は9.8kW。300Vの直流を出力する。

 2013年11月から開始したV2Hの実証試験などの結果を生かした改良も加えた。「V2Hガイドライン2.0に対応しており、フェイルセーフも強化した。バスとしての操作性を高め、安全性を向上するために運転席側にV2Hのインジケーターランプも付けている」(同社)。

*2) 2015年1月14日から18日に豊田市で開催される「とよた世界環境ウィーク2015」の期間中、とよたエコフルタウンにおいてFCバスV2Hシステムを用いた公開給電実証を行う予定だ。同じく、1月15日にはイベント会場間で、FCバスシャトルも運行する。この期間中は路線バスとしての運行を中断する。

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