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» 2014年06月27日 23時40分 公開

電気自動車:燃料電池車、勝利の方程式は解けるのか (2/3)

[畑陽一郎,スマートジャパン]

電気自動車ではダメなのか

 電気自動車(EV)は、このようなハイブリッド車の技術開発の流れとは異なる位置にある。大容量バッテリーとモーターの組み合わせだけで走行する電気自動車の仕組みは、ハイブリッド車からエンジンを取り外しただけのように見える。しかし、そうではない。

 ハイブリッド車の航続距離(走行距離)はガソリン車と「同じ」だ。ところが、電気自動車に利用するバッテリーはハイブリッド車よりも容量を大きくしなければならない。航続距離をなるべくガソリン車に近づけるためだ。するとコスト高になってしまう。コストアップを我慢したとしても重量がかさむ。これは燃費が下がることを意味する。

 トヨタ自動車の判断はこうだ。水素はエネルギー密度が高く、航続距離を確保するために例えタンクの容量を増やしたとしても、電気自動車ほどコストが急速には増加しない。従って、航続距離がある一定の値を超えると、燃料電池車に軍配が上がる*2)

*2) 図4を見ると、燃料電池車にもバッテリーが搭載されているものの、バッテリーの位置付けは電気自動車とは異なる。「燃料電池車の走行は基本的には燃料電池に頼る。バッテリーは回生などに使うため、(電気自動車のような)大容量を搭載することはない」(トヨタ自動車)。なお、燃料電池は「電池」という名前が付いているものの、発電した電気を蓄える能力は持たない。

 同社が発表会で提示した電気自動車、プラグインハイブリッド車(ハイブリッド車)、燃料電池車のすみ分けもこのような見解を裏付けるものだ(図5)。電気自動車は短距離が中心、燃料電池車は長距離または大型車*3)、プラグインハイブリッド車はその間の用途を担う。

*3) バスなどの大型車は走行ルートを決めている場合が多く、水素の充填が課題になりにくいという理由もある。

図5 駆動技術と移動距離・車両サイズの関係 出典:トヨタ自動車

 電気自動車と比較した燃料電池車の利点はもう1つあるという。「充電」と「充填(じゅうてん)」の違いだ。

 電気自動車の充電にはある程度の時間がかかる。急速充電器を使ったとしても30分*4)。帰宅後に自宅でのみ充電する場合には問題にならないが、複数の場所を頻繁に行き来する場合には利便性が落ちる。ガソリンに頼ることができるプラグインハイブリッド車と電気自動車の間には大きな溝がある。

 燃料電池車が水素のフル充填に要する時間は3分程度。これはガソリン車と同等だ。電気自動車の「欠点」は燃料電池車ではクリアされている*5)

*4) 他にも「欠点」がある。多くの電気自動車には、バッテリーの残り容量と走行可能距離を表示する機能が備わっているものの、「電欠」の不安がある程度残る
*5) この他、燃料電池車は車内に蓄えられているエネルギー総量が電気自動車よりも多いという特徴がある。トヨタ自動車によれば、燃料電池車の非常時の電源供給能力は電気自動車の4〜5倍に及び、これは一般家庭の一週間分以上に相当するという。素早く充填でき、災害対策にも役立つ形だ。

燃料をどうやって入手する

 ただし、「充電」と比較した「充填」の優位性は、インフラを考えたときに逆転する。

 電気自動車用のスタンドはなかなか普及しないといわれつつも、2013年9月時点では、家庭などに設置したものを除いて、全国で普通充電器が3500基、急速充電器が1900基まで増えている。メーカー各社による充電インフラ普及支援共同プロジェクトも進んでいる(関連記事)。プロジェクトの目標は2014年内に普通充電器8000基、急速充電器4000基だ。普通充電器と比較して、急速充電器の設置には費用がかかる。それでも急速充電器を備えた充電スタンドの価格は200〜500万円、設置工事費を含めると300〜1200万円である*6)。1億円弱が必要なガソリンスタンドよりも投資が進みやすいだろう。

*6) 経済産業省の次世代充電インフラ整備促進事業におけるコスト例。同事業ではスタンド、工事費とも最大3分の2を補助する。本文中の価格は補助金を加味する以前の費用だ。

 これに対して、水素ステーションはいまだポツリポツリと点状に分布する段階だ。2015年度内に4大都市圏とそれをつなぐ高速道路を中心に100カ所まで増やす計画が立てられているものの、現時点では工事が完了していないものを含めても全国で30カ所強にすぎない。

 普及が進まない理由の1つが水素ステーションの建設コストだ。急速充電器とは桁が違う。水素スタンドの初期投資費用は3〜5億円。政府は「燃料電池自動車用水素供給設備設置補助事業」を進めており、補助金によって最大2分の1(または最大2億8000万円)を補助するものの、計画通りに進む見込みは少ない。

 このような状況は燃料電池車を販売する自動車メーカーにとっては足かせになる。「当社が自ら水素スタンドを立ち上げる計画はない。しかし、自動車メーカーとして、水素スタンドが拡大するよう支援したいと考えている」(トヨタ自動車)。

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