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» 2014年06月27日 23時40分 公開

電気自動車:燃料電池車、勝利の方程式は解けるのか (3/3)

[畑陽一郎,スマートジャパン]
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まずはガソリンに勝つ

 実際に燃料電池車を購入するユーザーにとっては、水素スタンドの数はもちろん、水素の料金も気になるところだ。ところが肝心の価格がはっきりしない。「業界ではガソリンと同程度まで水素の価格が下がらなければ、普及は難しいと考えている。当初は元を取ることはできないだろう」(大阪ガス)。

 ただし、燃料電池車がある程度普及したとしても、国内の水素の価格が高騰することはなさそうだ。国内で1年間に生産される水素は2008年時点で約5億Nm3。燃料電池車1台のタンクには100Nm3程度の水素を充填でき、航続距離は約700km*7)。燃料電池車の累積出荷台数が1万台に達し、全ての燃料電池車が1日100km走行したとしても、水素関連産業の年間生産量に占める消費量は1割程度だからだ。

*7) トヨタ自動車が2008年にリース販売を開始した「トヨタFCHV-adv」は156Lのタンクに70MPa(メガパスカル、700気圧)で水素を充填し、約760km走行できる(JC08モード)。なお、第43回東京モーターショー2013に同社が出展したセダンタイプの「Toyota FCV Concept」では約700km(JC08モード)となっていた。航続距離は車重などに依存するものの、一般には水素1kgで約100km走行できるとされている。

 さらに都市ガスから水素ガスを製造する装置を利用すれば、従来の水素の需給とは無関係に水素を入手可能だ(関連記事)。

本当にゼロエミッションなのか

 電気自動車が使う電力は、2014年時点で9割が化石燃料を利用した発電所に由来する。発電所で燃やしても、エンジンで燃やしても二酸化炭素は排出される。走行中の二酸化炭素排出量が0だとしても、地球全体を見るとエミッションは結局、ガソリン車と変わらないではないかという議論がある。

 これは誤りだ。なぜならガソリン車のエンジンは燃料を運動エネルギーに変える効率が30%と低いからだ。これに対して、先進的な火力発電所の効率は約60%、送電効率は95%以上、モーターの効率は約90%であり、総合効率は約50%と高い(関連記事)。ガソリン車の30%に対して明らかな優位性がある。

 同じ議論が燃料電池車にも当てはまる。天然ガス(都市ガス)から水素を製造したとしても、ハイブリッド車以上の燃費を実現できる。

 トヨタ自動車は各種の石油代替燃料について、特徴を簡潔にまとめている(図6)。図中にある「Well to Wheel CO2」とは、Well(油田など)からWheel(車輪)までの間、どの程度、二酸化炭素を放出するかという意味だ。電気、水素はいずれも天然ガスよりも二酸化炭素排出量が少なくすることができる。なお、天然ガスはガソリンよりも二酸化炭素排出量が少ない。

図6 石油代替燃料の特徴 出典:トヨタ自動車

再生可能エネルギーと水素の関係

 電気自動車、燃料電池車のいずれも、再生可能エネルギーの導入規模が増えていくに従って、Well to Wheelという意味においてもゼロエミッションに近づいていく。太陽光発電所や風力発電所が生み出す電力を考えると、電力の議論は納得できる。水素はどうなのだろうか。

図7 水素社会が実現した姿 出典:トヨタ自動車

 トヨタ自動車が公開したエネルギー社会の未来図にはさまざまな技術が描かれている(図7)。図中央にある「水素−電力」変換は分かりやすい。再生可能エネルギーの導入規模が増えていくと、使い切れない電力が余る季節、時間帯が増えてくる。既にドイツでは余剰電力を使って水素を得るPower to Gas技術が開発されている。一部の水素は二酸化炭素と反応させてメタンの形で都市ガスに供給する。

 自動車メーカーもPower to Gas技術に取り組んでいる。ドイツAudiは同技術を利用してメタンを製造している(関連記事)。

 図7の左下にある下水処理とは何だろうか。下水に含まれる有機物を高品位のメタンガスに変化させる技術は既に実用化されている。高品位なガスを天然ガス車向けに販売しているほどだ(関連記事)。これをさらに一歩進めてメタンから水素を得、燃料電池車に供給する計画も進んでいる(関連記事)。

 図7には描かれていないものの、エネルギー資源が余っている国で水素を製造し、それを輸入する計画もある(関連記事)。

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