下水と燃料電池の組み合わせ、新電力に高く売電自然エネルギー(1/2 ページ)

長野県松本市は市内の浄化センターに出力315kWの燃料電池システムを導入。無駄になっていた消化ガス(メタンガス)を利用して発電し、2015年2月から新電力にプレミアム価格で販売する。

» 2015年02月10日 07時00分 公開
[畑陽一郎スマートジャパン]
図1 長野県松本市と浄化センターの位置

 メタウォーターは2015年2月6日、下水処理の際に発生する消化ガスを利用した発電設備が長野県松本市で完成、運転を開始すると発表した(図1、図2)。同社が市から設計・調達・建設(EPC)を受注し、「両島浄化センター」(松本市両島)に燃料電池システムを含む消化ガス発電設備を設置した。

 年間発電量は約168万kWhを見込む。「発電した電力は新電力であるエネットに販売する。同社へ固定価格買取制度(FIT)の買取価格*1)よりも高く、プレミアム価格で20年間販売する形だ」(松本市上下水道局)。松本市が投じた事業費4億4000万円を売電によって回収する。

*1) 2014年度の買取価格は39円(税別)、区分はメタン発酵ガス(バイオマス由来)。40円で販売したときの年間売電額は6720万円である。

図2 完成した消化ガス発電設備 出典:メタウォーター

無駄になっていた消化ガスを有効利用

 松本市が事業を企画した発端は、下水処理の際に残る汚泥にある。細菌の働きを借りて汚泥を分解すると、メタンと二酸化炭素を主成分とする消化ガスが年間約110万m3発生する。可燃性のガスだ。細菌の働きを高めるためには、汚泥を分解する汚泥消化槽を一定の温度に保つ必要がある。発生した消化ガスの3〜4割を加温に用いていたものの、残りは焼却処分していた。

 そこで、出力105kWの燃料電池システムを3基導入し、消化ガスを燃料とした発電を始める(図3)。燃料電池システムを導入した理由はメタウォーターによれば4つあるという。効率が高いこと、メンテナンスが容易であること、騒音や振動を生まないこと、排気ガスを発生しないことだ*2)。導入した燃料電池は富士電機のりん酸形燃料電池(PAFC)。発電効率が約40%と高い。

*2) 消化ガスの主な成分であるメタン(CH4)には炭素(C)が含まれており、燃料電池を利用したとしても二酸化炭素が発生する。ただし、下水に含まれる炭素はほとんどが現在の生物に由来し、化石燃料を利用した時のように正味の二酸化炭素量が増えるわけではない。

図3 燃料電池が動作する仕組み 出典:メタウォーター
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