燃料電池フォークリフトが関西国際空港に、「水素エアポート」の実証開始スマートシティ

世界で最大級の「水素エアポート」を目指す関西国際空港の計画が動き出す。燃料電池を搭載したフォークリフトを貨物運搬用に導入して、空港内で水素を供給する実証実験を開始する。燃料電池車の「MIRAI」も空港設備のチェックに利用するほか、商用水素ステーションの建設も決定した。

» 2015年02月13日 09時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 関西国際空港では水素エネルギーの導入体制を2016年度までの3年間に整備する計画で、第1弾として燃料電池フォークリフトの実証運用を2月23日に開始する(図1)。豊田自動織機が開発した実証用の燃料電池フォークリフト1台を導入して、国際貨物用の医薬品専用倉庫で作業性能を検証する予定だ。

図1 関西国際空港に導入する燃料電池フォークリフトと燃料電池車。出典:新関西国際空港

 空港の維持管理作業用にトヨタ自動車の燃料電池車「MIRAI」も導入した。滑走路や航空灯火のチェックなどに利用する。さらに2015年度内に第2弾として、MIRAIと同じ燃料電池を搭載した実用仕様のフォークリフト2台を導入する計画だ。

 燃料電池フォークリフトの実証開始に合わせて、水素を供給する設備も空港内に設置した。圧縮した水素ガス(圧力15MPa=メガパスカル)をシリンダー型の容器に入れて外部から搬入する方法をとる。水素ガスを圧縮機で40MPaまで昇圧してから蓄圧器に格納して、ディスペンサーで供給する仕組みである(図2)。

図2 燃料電池フォークリフトの水素供給の仕組み(上)。ディスペンサー(左下)、水素容器・圧縮機・蓄圧器(右下)。出典:新関西国際空港、岩谷産業

 フォークリフトに水素を充填する時間は3分程度で済むため、軽油や電力を使う従来のフォークリフトに比べてCO2排出量や充電時間を削減できる利点がある。実証運用の結果をもとに、2016度からは年間に数10台の規模で燃料電池フォークリフトの導入を予定している。本格的な運用体制に向けて、液化水素タンクを使った大規模な水素供給システムを2016年度内に構築する予定だ。

 関西国際空港は環境性と安全性の両面で最先端の空港を目指して、再生可能エネルギーと水素エネルギーの導入を推進している。2014年度から「水素グリッドプロジェクト」に着手して、空港の内外で利用する車両を燃料電池に切り替える一方、水素の供給設備も拡大する方針だ(図3)。

図3 「水素グリッドプロジェクト」の全体像。出典:新関西国際空港

 2016年度には関西国際空港と大阪国際空港を結ぶシャトルバスにも燃料電池バスを導入する予定で、それに合わせて水素ステーションを建設することも決定した(図4)。国内の空港では初めての商用水素ステーションになる。岩谷産業が大阪府の堺市にある液化水素の製造拠点からタンクローリー車で搬入するオフサイト方式で運営する。

図4 「イワタニ水素ステーション関西国際空港」の完成イメージ。出典:新関西国際空港、岩谷産業

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