風力発電を倍増させるポーランド、老朽化した電力系統を日本の技術が支えるスマートシティ

ポーランドは2020年までに再生可能エネルギーの比率を15%まで高める目標を掲げて、風力発電を倍増させる計画を進めている。日本でも課題になっている送配電ネットワークが不安定になる問題を解決するために、日立製作所など4社が現地の企業と共同で実証事業に取り組む。

» 2015年02月25日 11時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 日本の誇る電力系統(送配電ネットワーク)の安定化技術が、ポーランドの再生可能エネルギーの導入に貢献する。日立グループが中心になって、蓄電システムを使ったスマートグリッドの実証事業をポーランドの北部で実施する計画だ。

 蓄電システムには鉛電池とリチウムイオン電池の2種類を組み合わせたハイブリッド型を採用して、風力発電による出力変動に対応できるようにする。日立製作所が開発した「SPS(Special Protection Scheme)」と呼ぶ電力系統の安定化技術を導入する点が特徴で、電力系統に事故が発生した場合でも自動的に発電設備の出力を抑制して安定稼働を続ける仕組みだ(図1)。

図1 ポーランドにおけるスマートグリッド実証事業の実施イメージ。出典:NEDOほか

 日立製作所を中心とする日本企業4社が事前調査を11月まで実施したうえで、2016年から3年間にわたって実証事業に取り組む。ポーランド政府の支援を受けて現地の企業も参画することになっている。

 ポーランドの北部は風況に恵まれていて、年間の平均風速は6メートル/秒を超える(図2)。EU(欧州連合)に加盟するポーランドは再生可能エネルギーの比率を2020年に15%まで高めてCO2排出量の削減を図る計画で、特に風力発電の導入に力を入れている。2013年に3400MW(メガワット)だった風力発電の導入量を2020年にほぼ倍増の6600MWへ拡大させる目標を掲げている。

図2 ヨーロッパの風況(ポーランドはほぼ中央)。出典:NEDO(EEAの資料をもとに作成)

 日本企業はポーランドで風力発電の開発にも協力してきた。J-Power(電源開発)と三井物産が2008年に「ザヤツコボ(Zajaczkowo)風力発電所」をポーランドの北部で運転開始している(図3)。24基の大型風車で48MWの発電能力があり、年間の発電量は1億kWhに達する。

図3 「ザヤツコボ風力発電所」の所在地と全景。出典:J-Power、三井物産

 ただしポーランドの電力系統は半分以上の設備が40年以上も前に建設されたために、天候によって出力が変動する風力発電の増加に伴って安定稼働が課題になっている。実証事業を通じて日本の安定化技術の有効性を検証して、ポーランド国内の電力系統の更新・増強につなげる狙いだ。

 同様の課題は日本にもある。北海道や東北、九州の離島などで蓄電池を使った系統安定化の実証プロジェクトが始まっている。日本の風力発電の導入量は2013年度末の時点で2710MWにとどまり、ポーランドと比べて2割ほど少ない。今後も急増が見込まれるポーランドの風力発電を対象にした系統安定化技術の実証結果は日本でも生かせる可能性がある。

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