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» 2015年03月16日 09時00分 UPDATE

自然エネルギー:宇宙太陽光発電へ一歩前進、10kWの電力を500メートル無線伝送に成功

未来の再生可能エネルギーとして注目を集める宇宙太陽光発電システムの技術開発が着実に進んでいる。中核になる無線送電の地上実証試験が相次いで成功。JAXAが55メートルの無線送電に成功したのに続いて、三菱重工業は距離を500メートルに延ばして10kWの電力を伝送した。

[石田雅也,スマートジャパン]

 「宇宙太陽光発電システム」(SPSS:Space Solar Power System)は地上3万6000キロメートルの静止軌道に設置した太陽光発電設備から、地上の受電装置まで無線で電力を伝送する。長距離の無線送電技術が不可欠で、政府が「宇宙基本計画」の重要プロジェクトの1つとして2013年から推進している。

 宇宙太陽光発電を対象にした無線送電技術の開発を担っているのはJAXA(宇宙航空研究開発機構)、J-spacesystems(宇宙システム開発利用推進機構)、三菱重工業の3者である。JAXAはJ-spacesystems と共同で開発したマイクロ波による無線送電技術の実証試験を3月8日に屋外で初めて実施した。55メートル離れた送電部と受電部のあいだで最大1.8kWの電力を伝送することができた(図1)。

jaxa_spss_sj.jpg 図1 JAXAによる地上実証試験のシステム構成。出典:JAXA

 続いて三菱重工業もJ-spacesystemsとの共同プロジェクトによる無線送電の地上実証試験に成功したことを3月12日に発表した。JAXAの実証試験と比べると伝送距離を500メートルまで延ばして、無線で送る電力も10kWに増強した。受電装置には社名の略称である「MHI」の形にLEDライトを並べて、送電した電力で点灯させた(図2)。

mhi1_sj.jpg 図2 三菱重工業が地上実証試験に利用した送電装置(左)と受電装置(右)。出典:三菱重工業

 無線による送電方法は電力をビーム状にして受電装置まで正確に送ることが課題になっている。JAXAと三菱重工業の地上実証試験では、マイクロ波のビームを放射する制御システムの正確性も確認することができた。さらに精度と距離、伝送する電力の大きさを引き上げて、2030年代に宇宙太陽光発電の実用化を目指す計画だ。

 宇宙太陽光発電のほかにも無線送電技術を生かせる領域がある。日本国内には送電線を敷設できない地域があるため、無線送電で電力を送れるメリットは大きい。洋上風力発電の建設プロジェクトも全国各地の近海に広がり始めた。通常は海底に送電ケーブルを敷設する方法をとるが、無線送電が可能になると送電設備の建設・運用コストを大幅に軽減できる期待がある。

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