太陽電池の「コスト半減」、ウエハーを溶けたシリコンから直接製造蓄電・発電機器(1/2 ページ)

韓国Hanwha Q CELLSと米1366 Technologiesは2015年3月5日、高効率で低コストな太陽電池セルを開発するために提携を結んだと発表した。溶融シリコンから直接、連続的に多結晶シリコンウエハーを製造できる手法「Direct Wafer」を改善する。この手法を利用した太陽電池セルの変換効率は最大18%に達している。現在一般的な手法と比較すると、ウエハーの製造コストが半減するという。

» 2015年03月17日 11時00分 公開
[畑陽一郎スマートジャパン]

 韓国Hanwha Q CELLSと米1366 Technologies*1)は2015年3月5日、高効率で低コストな太陽電池セルの開発に向けた提携を結んだことを発表した。

 提携の目的は、1366 Technologiesが開発を続けてきた手法「Direct Wafer」を商用化すること。同社によれば、Direct Waferを利用すると、多結晶シリコン太陽電池用ウエハーの生産コストを現在の2分の1にまで低減できる。

 図1はエネルギー省高等研究計画局の補助金を受けて試作した156mm角のウエハー。図1では350枚のウエハーを重ねている。大きさの比較のために、旧5セント硬貨(直径21.21mm)が写っている。

*1) 1366 Technologiesは米MITから2007年にスピンアウトしたベンチャー企業。社名は太陽定数に由来する。太陽から地球と同じ距離にある宇宙空間で、太陽光に対して垂直な1m2の面が受け取るエネルギーを太陽定数と呼ぶ。値は1366W/m2

図1 Direct Wafer技術を利用して製造した太陽電池セル 出典:Final Scientific Report for DOE/EERE(DE-EE0004738)

 1366 Technologiesはこれまで6400万米ドル以上の資金を集めており、Hanwhaグループも2010年、シリーズBに参加している。この資金を利用して、2015年第3四半期に米国で250MW分の年産規模を持つ製造設備の建設を1366 Technologiesが開始する予定だ。なお、建設計画についてはHanwha Q CELLSとの提携発表以前から公開していたものだ。

Direct Waferの優位性とは

 Direct Waferの利点は、ウエハーの製造工程を短縮できることだ。それによって、製造時に使うエネルギーとシリコン材料を減らし、製造時間を短くできる。1366 Technologiesによれば、新規の製造装置に対して投資をする必要がほとんどなく、現在の多結晶シリコン太陽電池の60%を置き換え可能なのだという。

 Direct Waferの詳細は公表されていない*2)。分かっているのは、溶融炉に連続的にシリコン原料を投入し、ウエハーを直接取り出すことだ。

 現在、ウエハーを製造する一般的な手法は、キャスト法と呼ばれている。約1000度の溶融シリコンを直方体の鋳型に流し込み、ブロック状の多結晶シリコンを作る。その後、微細な工業用ダイヤモンドを取り付けたワイヤーで約200μm(0.2mm)厚のウエハを切り出す(スライシング)。その際、ワイヤーの太さに相当する約100μm分のシリコンが切削くずとなってしまう。このため、1366 Technologies以外にも、スライシングを伴わないウエハー製造技術の研究開発が進められてきた。

*2) 同社は、2010年3月に国際公開特許(WO特許)「Methods and apparati for making thin semiconductor bodies from molten material」(出願番号PCT/US2010/026639、公告番号WO2010104838 A1)を出願している。

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