住宅・店舗・学校をつなぐエネルギー管理ネットワーク、日本の技術が国際標準にスマートシティ

関東から関西までの住宅や学校、ガソリンスタンドを含む27カ所のエネルギーをネットワーク経由で管理する実証実験が1年半にわたって実施された。合計800台以上の機器を接続して、センサーからのデータをもとに空調や照明を遠隔で制御する。開発した技術は国際標準に採用される見通しだ。

» 2015年03月24日 13時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

 富士通と沖電気工業が大学2校と共同で広域のエネルギー管理ネットワークを構築・運用する実証実験に取り組んだ。実験の対象になった施設は石川県の能見市に建設した実験住宅1棟のほか、一般住宅15棟、ガソリンスタンド3店舗、小学校から大学までの学校8校に及ぶ(図1)。一般住宅は関東・中部・北陸・関西の4地域に広がり、ガソリンスタンドも栃木・東京・愛知に分散させた。

図1 実証実験の実施イメージ。出典:富士通、沖電気工業ほか

 実証実験には各種のセンサーと家電機器や設備機器をインターネットで接続して連携させるM2M(Machine-to-Machine)の技術を応用した。M2Mは機器同士が通信しながら、人手を介さずに運転状況を制御する仕組みだ。そのために必要な通信プロトコルやアプリケーションを開発して実用性を検証した。

 住宅では電力使用量のほかに温度や風速などを計測できるセンサーを設置して、空調や照明、電動窓や電動カーテンを含む合計18種類の機器をネットワークで接続した。戸外から涼しい風を取り入れられる状況では、空調を停止して窓を開けたり、カーテンを閉めて温度の上昇を防いだりする。各機器の通信にはスマートメーターでも使われている920MHzの無線方式を採用した。

 ガソリンスタンドでは照明の自動制御と蓄電池によるピークシフトを実施する一方、学校ではCO2濃度や湿度を監視しながら生徒の集中力低下やインフルエンザの予防に取り組んだ。実験結果をもとに学校を中心にした住宅1000棟で構成するコミュニティをモデルにシミュレーションした結果、全体で約20%のエネルギー使用量の削減につながることを確認できた。

 実証実験のために開発した通信機能は国際標準化を目指す。建物内に設置する各種の機器(デバイス)を遠隔で動作させるサービスプラットフォームの部分は、すでにITU-T(国際電気通信連合-電気通信標準化部門)を通じて国際標準になっている(図2)。今後は920MHzの無線通信によるインタフェースの部分も2015年内にITU-Tで国際標準の認定を受ける見通しだ。

図2 実証実験のシステム構成。出典:富士通、沖電気工業ほか

 実証実験には富士通と沖電気工業のほかに、日本大学と北陸先端科学技術大学院大学(JAIST)が加わった。総務省が支援する「スマートコミュニティにおけるエネルギーマネジメント通信技術」の対象事業として実施したもので、実験期間は2013年7月から2015年1月の1年半である。詳細な実験結果は2015年3月中に総務省へ報告することになっている。

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