100万km走る燃料電池車、4年間で技術開発電気自動車(1/2 ページ)

新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は燃料電池車が大量に普及するために必要な研究開発「固体高分子形燃料電池利用高度化技術開発事業」のための公募を開始した。2019年度末までに燃料電池の性能、耐久性、コストを改善し、より短い時間で製造できる技術開発を進める。

» 2015年03月24日 11時00分 公開
[畑陽一郎スマートジャパン]

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は燃料電池車が大量に普及するために必要な研究開発「固体高分子形燃料電池利用高度化技術開発事業」の公募を開始した。2015年4月6日まで受け付ける。2019年度末までに燃料電池の性能、耐久性、コストを改善し、より短い時間で製造できる技術開発を進める。2015年度の予算は30億円を予定する。

 今回の事業の目的は燃料電池車が大量に生産されると予測されている2025年に必要な技術を開発することだ。燃料電池車を開発するのではなく、燃料電池車の性能を左右する燃料電池の基礎技術を高める形だ。

 燃料電池車と燃料電池の関係を図1に示した。図1はトヨタ自動車が2014年11月に「MIRAI」を発表した際の資料だ。

図1 燃料電池車の動作原理 出典:トヨダ自動車

電池性能向上を狙う

 NEDOの技術開発では2つの目標を掲げた。燃料電池自体の性能を高める「普及拡大化基盤技術開発」(委託事業)と燃料電池の生産に必要な時間を短縮する「プロセス実用化技術開発」(助成事業)だ。

 普及拡大化基盤技術開発が目標とする燃料電池の性能は高い。3つの目標を掲げ、これらを組み合わせた性能を実現する。総合性能を現在の燃料電池の10倍程度に高める。そのために出力密度を改善する。燃料電池のコストを押し上げている貴金属(白金)触媒の必要量を車1台当たり数gにまで削減。燃料電池の内部で酸素と水素が反応して電力を生み出している燃料電池スタックの耐久性を現在の10倍程度に高める。

 このような性能・仕様を満たす燃料電池の製造に必要な基礎技術を開発する。

図2 燃料電池の目標仕様(強調は本誌) 出典:NEDO

 図2はNEDOが基本計画として示した燃料電池の目標仕様だ。主な部分を着色して示した。最初の「4kW/L」という部分は体積出力密度を表す。より小型で大出力の燃料電池という意味。なお、MIRAIでは3.1kW/Lだ。

 2番目の100万km走行後に所定の性能を満たす、という部分は燃料電池スタックの耐久性を意味している。MIRAIのような乗用車と比較して、商用車は走行距離が長くなる。燃料電池車がガソリン車を置き換えていくなら、商用車としても利用できなくてはならない。3番目の0.1〜0.03g/kWという部分は、もしも燃料電池の出力が100kWであれば、白金を3〜10g使うことに相当する。MIRAIの燃料電池の出力は114kWだ。

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