技術開発は2段階で進める。2017年度末時点の中間目標は、燃料電池内部で発電する最小単位(セル)とセル内部に収まっている膜電極複合体(MEA)の設計手法の確立だ。いきなり最終目標に向かうのではなく、セルやMEAの材料や形状のうち、どの部分が性能に影響を与えるのかを把握し、性能評価手法や解析手法の開発に取り組んでいればよいとした。
図3はホンダが2014年11月に発表した燃料電池車のコンセプトカー「Honda FCV CONCEPT」の発表資料の一部。燃料電池の最小単位である燃料電池セルの断面図だ。
水素を燃料極(電極)に通じる微小なパイプ(An)と、空気を空気極(電極)に通じる微小なパイプ(Ca)、燃料極と固体高分子膜(セパレーター)と空気極を一体化したMEAの位置関係が分かる。いずれも微細な構造を持つことが分かる。ホンダは、燃料電池が生み出す水がCaに詰まり、出力が低下することを防ぐ技術開発を実現したという。NEDOのいう「セルやMEAの材料や形状のうち、どの部分が性能に影響を与えるか」という一例だ。
2019年度末には最終目標を達成する。このとき、先ほどの3つの条件を組み合わせた形で実現する。「出力密度×耐久時間÷貴金属使用量」という式の値が、現在の10倍以上になることを目指す。例えば出力密度が10倍にならなくても、出力密度が2倍、耐久時間が3倍、貴金属の使用量が60%に減る、このような結果で構わない。
NEDOが狙うもう1つの開発目標は、プロセス実用化技術開発だ。これは1台の燃料電池を製造するために必要な時間を短くするというもの。燃料電池車の市販が始まった際、需要と比較して生産能力が十分高くなかったため、納車までに長い時間がかかったという事例がある(関連記事)。
トヨタ自動車や日産自動車によれば、燃料電池車の生産台数を左右するのは燃料電池の生産能力だ。NEDOも燃料電池の製造能力が燃料電池車の律速要因だと捉えた。
そこで、2015年度から2018年度の3年間、燃料電池の製造プロセス技術と品質管理技術を確立する。タクトタイムを短くして、年間数万台〜10万台以上の生産に対応できることが目的だ。
開発の目標は、製造時間を現在の10分の1以下にするために必要な技術を確立すること。現在の生産技術では年間数百台(約400セル/台、MIRAIは370セル)であることから、月20日、1日8時間生産するとセル当たりのプロセス時間は数十秒となる。これを10秒以下にする。
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