地下鉄の駅上に展開するメガソーラー、連続する8駅で1.1MWが稼働自然エネルギー

都心を走る東京メトロが2012年から導入を進めてきた「東西線ソーラー発電所」が完成した。地下鉄の路線のうち地上にある8つの駅の屋根に太陽光パネルを設置して、メガソーラー並みの発電能力を発揮する。発電した電力は駅の構内で利用するほか、余剰分は隣接する駅にも融通できる。

» 2015年03月31日 13時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

 東京都と千葉県を結ぶ地下鉄・東西線には地上駅が9カ所ある。このうち連続する8つの駅に太陽光発電設備を導入して「東西線ソーラー発電所」を構成する(図1)。最後の8カ所目の駅で3月28日に発電を開始したことにより、約3年間に及ぶ導入プロジェクトが完結した。

図1 「東西線ソーラー発電所」の展開計画(画像をクリックすると拡大)。出典:東京メトロ

 それぞれの駅の発電能力は93〜253kWの範囲で、8カ所を合計すると1.1MW(メガワット)になる。複数の駅を組み合わせた発電設備だが、駅の屋根を利用してメガソーラーを実現した例は初めてである(図2)。年間の発電量は109万kWhになり、一般家庭の使用量に換算して300世帯分に相当する。

図2 8つの駅の太陽光パネル設置状況。出典:東京メトロ

 発電した電力は駅の構内の照明や空調、エスカレータやエレベータに供給して、電力会社からの購入量の抑制に生かす。発電量が多い駅からは、余剰分を隣接の駅に融通することもできる。鉄道では電車に電力を供給するための「電車線」を使って、電車間や電車−駅間で送配電が可能になっている(図3)。

図3 電車間や電車−駅間で電力を融通する仕組み(画像をクリックすると拡大)。出典:東京メトロ

 東京メトロは太陽光発電の導入と並行して、電車がブレーキをかけた時に発生する回生電力を有効に活用する。駅の構内に「駅補助電源装置」を設置して、電車から送られてくる直流の回生電力を交流に変換して駅で利用できるようにする仕組みだ(図4)。

図4 電車の回生電力を駅で利用できる「駅補助電源装置」。出典:東京メトロ

 東西線ソーラー発電所の中で最大の発電能力がある「妙典(みょうでん)駅」に2014年6月に初めて装置を導入して効果を検証してきた。新たに3月21日と28日に東西線の2カ所を含む7カ所にも設置して利用範囲を拡大した。8カ所の合計で年間に175万kWhの回生電力を利用できる見込みで、太陽光発電と合わせて800世帯分に匹敵する電力の節約になる。

 東京メトロは今後も再生可能エネルギーの導入量と回生電力の利用量を拡大しながら環境負荷の低減を図る方針だ。

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