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» 2015年05月28日 11時00分 UPDATE

「電力」に迫るサイバーテロの危機(1):今、電力システムにセキュリティが必要とされている4つの理由 (1/2)

電力システムに、今、大きな転換期が訪れている。電力自由化やスマートメーターの普及など、より効率的な電力供給が進む一方で、これまで大きな問題とならなかった「サイバーセキュリティ」が重要課題となってきたのだ。本連載では、先行する海外の取り組みを参考にしながら、電力システムにおけるサイバーセキュリティに何が必要かということを紹介する。

[佐々木 弘志 / マカフィー,スマートジャパン]

 本連載は、電力システムに関わる全ての関係者に対して、電力システムにおけるサイバーセキュリティという観点で、先行する海外の取り組みを参考としながら、その課題や対策についてさまざまな角度から分かりやすく紹介し、自らの取り組みの参考としていただくことを目的としている。

 初回となる今回は、まず本連載に関する背景を理解するために、今、電力システムセキュリティが必要とされている理由を紹介し、それに伴って政府を中心として行われている日本国内の対策の動向について解説したい。

電力にセキュリティが必要な理由とは?

 なぜ今、電力システムのサイバーセキュリティが必要とされているのだろうか。それには、以下の4つの大きな理由がある(図1)。

  1. 電力システムのオープン化
  2. 電力システム改革の進行
  3. スマートメーター普及
  4. 2020年東京オリンピック・パラリンピック開催
photo 図1:電力システムのセキュリティが必要とされている理由と、それに伴う政府の取り組み ※出典:マカフィー

 これらの理由をそれぞれ見ていこう。

電力システムのオープン化

 「電力システムのオープン化」とは、電力システムを構成する制御システムが、従来の専用システムから、一般の情報システムにより近いものに移行しつつある動きのことを指している。具体的には「制御システム間の通信インタフェースのイーサネット化」と「制御システムの汎用OS化(Windows Embedded, Linuxなどの利用)」を指しており、これらの結果、制御システム特有の事情が薄れたことで、サイバー攻撃の対象としてのハードルが下がり、その危険性が増大してきている(関連特集)。

電力システム改革の進行

 「電力システム改革の進行」は、電力自由化や広域系統運用機関の設立などを指している。将来的に、既存の10電力会社が発送電分離の方針に基づいて分社化されていく他、新規の事業者が電力マーケットに参入可能となる(関連記事)。そのため、発電から、送電、配電までの電力システムに複数の会社が関わることになり、これらの会社間で相互にデータをやりとりすることを考慮したサイバーセキュリティ対策が必要となる。

スマートメーター普及

 「スマートメーター普及」は、電力・データの流れがこれまでの片方向から双方向となることを意味している。家庭内や企業などの電力データの把握が効率的になると同時に、システム全体の接続性が増すため、情報を盗まれるなどの危機も増す。これらを考慮したセキュリティ対策が求められている。

2020年東京オリンピック・パラリンピック開催

 「2020年東京オリンピック・パラリンピック開催」は、開催時の日本国内外からのサイバー攻撃の危険性が増えるということを意味する。実際に、ロンドンオリンピックの開催時には、開会式において電力システムを狙った攻撃があり、東京においても同様の危険性が指摘されている。そのため、電力を含めた関連インフラにおけるセキュリティ対策が検討されている。

 これらの主な4つの理由により、今、まさに電力システムのサイバーセキュリティが必要とされているのだ。

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