電力会社の燃料費が急減、電気料金の単価が半年間で1.71円も下がる電力供給サービス

震災後に増え続けた電力会社の燃料費が2015年に入って大幅に減ってきた。石油とLNG(液化天然ガス)の輸入価格が下落したためで、それに伴って毎月の電気料金に上乗せする「燃料費調整単価」がマイナスに転じた。7月分の単価は1月分と比べると、10社の平均で1.71円も安くなる。

» 2015年06月01日 13時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

 原子力発電所を再稼働させる理由の1つに、火力発電の燃料費が挙げられてきた。電力会社の収益を悪化させるだけではなく、電気料金の値上げにつながるためだ。現行の電気料金には「燃料費調整制度」が設けられていて、電力会社が調達する燃料費の増減に伴って単価が変動する仕組みになっている(図1)。その単価が2015年に入って急速に下がり始めた。

図1 電気料金の計算方法(家庭向けの標準メニューの場合)。出典:東北電力

 電力会社10社の「燃料費調整単価」をまとめた結果、1月から7月までの半年間に電力1kWh(キロワット時)あたり平均で1.71円も低下していた(図2)。月間に300kWhの電力を使う標準的な家庭の場合で月額500円以上の削減になる。企業向けの燃料費調整単価も同じ水準で変動するため、家庭と企業の双方で電気料金が安くなる状況だ。

図2 2015年1〜7月の燃料費調整単価(家庭向けを中心とする低圧の場合)。単位:円、▲はマイナス

 10社の中では北海道電力の単価が最大の削減幅になっていて、半年間で2.65円も下がった。北海道電力では石油火力の比率が高く、石油の輸入価格の低下が燃料費の削減をもたらした。次いで東京電力の単価が2.49円も安くなっているが、これはLNG(液化天然ガス)の輸入価格が急速に下落した効果によるものだ。

 電力会社の燃料費調整単価は3〜5カ月前の化石燃料の輸入価格をもとに決めることになっている。最新の2015年7月分の単価は2〜4月の3カ月間の平均値で計算する。直前の1〜3月と比べて石油(原油)は4%の低下、LNGは11%も低下した(図3)。石炭だけは横ばいの状態で、石炭火力の比率が高い北陸電力は単価の下落幅が最も小さい。

図3 燃料費調整単価の基準になる化石燃料の輸入価格(財務省の貿易統計による)。kl:キロリットル、b:バレル、t:トン。出典:東北電力

 このところ産油国が原油の価格を低い水準に維持する戦略をとる一方、LNGは調達先が広がったことで輸入価格が下がってきた。原油・LNGともに当面は値上がりする兆しが見られないことから、電力会社の燃料費も2015年度は従来よりも低い水準で推移する見通しだ。電気料金の燃料費調整単価には3〜5カ月の遅れで反映するため、電力会社に差益が生まれる。

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