神奈川県の臨海部で太陽光発電と水素を組み合わせた実証プロジェクトが始まった。東京湾岸に水素エネルギーを展開する構想の第1歩だ。停電時でも水素を使ってCO2フリーの電力と温水を供給できる。下水から水素を製造する方法にも取り組みながら、県内の全域に水素ステーションを拡大する。
いま水素エネルギーの導入に最も力を入れている地域の1つが神奈川県の川崎市だ。東京湾岸の工業地帯に水素の供給ネットワークを作り上げて、水素を中核にした新しい産業を形成していく構想である(図1)。
国内外で製造した液化水素を工業地帯で受け入れて、水素ガスに転換してから発電所や水素ステーションに燃料として供給する。東京の都心部に隣接する立地を生かして、石油に代わる次世代のエネルギー供給基地として発展させる狙いだ。
その先駆けになるプロジェクトが臨海部の公共施設で4月から始まっている。川崎市が運営する「川崎マリエン」の敷地の中で、東芝が開発した水素エネルギー供給システムの第1号が運転を開始した(図2)。
このシステムでは太陽光パネルで発電した電力を使って、水を電気分解して水素を製造することができる。現在のところ水素は化石燃料から製造する方法が主流になっているため、CO2を排出しないクリーンなエネルギーとは呼べない。太陽光などの再生可能エネルギーで作って初めてCO2フリーの水素になる。
川崎マリエンに設置した水素エネルギー供給システムでは、太陽光パネルで発電した最大30kW(キロワット)の電力を利用する。太陽光と水から1時間に1立方メートルの水素を製造する能力がある。さらに内蔵した燃料電池を使って再び発電しながら温水を作ることも可能だ。
製造した水素はタンクに貯蔵できて、太陽光で発電できない状態でも300人分の電力と温水を1週間にわたって供給する能力がある(図3)。川崎マリエンは災害時に帰宅困難者の一時滞在施設に指定されている。電力やガスの供給がストップしても、水素をエネルギー源にして日常生活を続けることができる。
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