ソーラーの発電量を予測し“公平に”出力抑制する制御技術太陽光

NECと東京大学 生産技術研究所 荻本和彦特任教授、東京農工大学 工学研究院 池上貴志准教授は共同で、太陽光発電の出力制御技術を開発した。

» 2015年08月25日 15時00分 公開
[三島一孝スマートジャパン]

 電力ビジネスには、需要と供給を常に一致させる「同時同量」という大原則がある。これは、変化し続ける需要量に対し発電量を合わせ続けなければならないということを示す。発電量と使用量のバランスが崩れると、送配電設備を流れる電力が不安定になり停電などを引き起こす可能性があるからだ。

 従来は大手電気事業者のみが地域を占有しており、発電から販売まで一貫して電力サービスを提供していた。そのため、同時同量も1つの企業内だけで計画・運用できた。しかし、発電量の変化が激しい、太陽光発電を含む再生可能エネルギーの比率が高まるにつれて、電力事業者にとっても管理することが難しくなってきた。そこで、再生可能エネルギーの発電所から送配電ネットワークへの出力を、状況に応じて制御・抑制する必要が出てきた。特に2014年に九州電力が口火を切った「接続留保」以降、「出力制御」は大きなテーマとなっている(関連記事)。

 2015年1月には、経済産業省 資源エネルギー庁が出力制御を行う際のルールが制定された(図1)。ただ、詳細な運用については電力会社に委ねられており、電力事業者およびエネルギー管理サービス事業者(アグリゲータ)にとっては、再生可能エネルギーによる余剰電力をどう受け入れるかというのは大きな課題だといえる(関連記事)。

photo 図1 発電設備の出力制御ルール(2015年1月26日から適用)出典:資源エネルギー庁

 これらの課題に対応するために、NECと東京大学 生産技術研究所 特任教授の荻本和彦氏、東京農工大学 工学研究院 准教授の池上貴志氏で開発を行ったのが、今回の技術である。開発した技術は主に2つの技術となる。1つ目が発電量の予測技術で、2つ目が発電事業者が偏ることなく自動で最適な出力配分を割り振れる制御技術だ。

発電量を「予測する技術」

 発電量の予測技術については、雲の量や気温などさまざまな気象や気候などの数千の条件をパラメータとし、これらと実際の太陽光発電の発電量を相関モデル化する。相関モデルにより、気象の類似度合いを見つけ、対象日の発電量の信頼度を予測する。これにより天気予報のような当たる確率(予測確率)を付与した予測が行えるという。

 予測確率が分かることにより、予測値の上下限を把握可能。例えば、100kW(キロワット)〜200kWというように発電量が予測できるようになる。予測値のずれ幅が算出できることで、電力会社などは、上下限値内の複数のケースに対する制御の仮説が立てられ、より適切な抑制量の設定と配分が可能になるとしている。

最適な配分を実現する出力制御技術

 制御技術については、先述した予測技術を基に予測した発電量をもとに、電力会社やアグリゲータが実際の抑制量を決定し、最適に配分・一括制御する。従来は、出力制御については、発電事業者の順番で決めたり、必要な出力制御量で決めたりすることで行っており、結果的に発電抑制量の無駄が多い状況になっていた。

 新たな技術では、発電量予測と過去の出力抑制の履歴や気候条件に基づき、公平性を考慮しながら過剰抑制を低減する独自のアルゴリズムを活用。1社だけが不利になるような条件を排除し、きめ細かく抑制量を決定する。さらに、この抑制量を制御対象の発電事業者に一斉伝達して制御する。これらにより、電力システムの運用シミュレーションを行って評価した結果、従来よりも抑制日数は多くなるものの、発電抑制量を3分の2に抑えられる検証結果を得たという。

 本来は発電した電力を蓄電池などで最適なタイミングにシフトして使えるようにするのが理想だが、蓄電池の価格などはまだ高く、これらの世界が身近になるのはまだ先の話だ。NECらが開発した技術は、現実的にできる限り電力事業者、発電者などの負荷を小さく再生可能エネルギーの活用を進めていく補助技術であるといえる。同社では、今後これらの技術の実用化及び普及に取り組んでいくとしている。

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