「水銀条約」で置き換えが加速する水銀灯、省エネ+制御で高天井LED照明に商機省エネ機器(1/4 ページ)

工場や倉庫内の照明のLED化が加速する兆しを見せている。省エネや長寿命、制御可能などLED照明の利点も大きな要因だが、市場を大きく動かしそうなのが2013年に成立した「水銀条約」である。

» 2015年11月26日 09時00分 公開
[三島一孝スマートジャパン]

 「水銀条約」は正式名称を「水銀に関する水俣条約」という。2013年に採択された。同条約では、水銀を含む製品の製造や輸出入を2020年までに原則禁止するとされている。日本政府も水銀による環境の汚染の防止に関する法案を2015年3月10日に閣議決定した。2020年に、水銀の含有量などを十分に抑えていない蛍光灯などの製造、輸出入も原則禁止となる。

 この「製造・輸出入が禁止される水銀添加製品」の1つとされているのが、高圧水銀(蒸気)放電ランプ(HPMV)である。高圧水銀ランプは、広場や公園、商店街などの照明、道路照明、スポーツ施設照明、工場照明、ライトアップなど高照度が必要な場所に広く使用されている(図1)。

photo 図1 水銀規制の対象となるランプ 出典:日本照明工業会

 今回の規制では高圧水銀ランプの2020年以降の製造・輸出・輸入が規制されるということなので、販売や使用そのものは禁止とならない。設置した高圧水銀ランプを使い続けている場合や、在庫製品の売買については違反とならないため、2020年になるとすぐに高圧水銀ランプが姿を消すというわけではない。また、高圧水銀ランプと同様に高照度照明として使用されているメタルハライドランプや高圧ナトリウムランプなどは規制の対象外となるため、代替としてこれらのランプを使うという選択肢を持つことができる。

 しかし、この動きを機に一気に進みそうなのがLED化である。それにはLEDの技術進化がある。

水銀規制を機に進むLED化

 現状で高圧水銀ランプが利用されているのは、高照度用途である。長い距離や広い範囲を明るく照らすということが必要となる。従来はLEDは、必要な範囲を十分な明るさで照らすということが難しく、またできたとしても製品の種類が限定され、幅広い用途で利用できるわけではなかった。しかし、そこが解消されLEDでありながら十分な照度を持ち、さまざまな用途に活用できる製品群が出そろってきた。「高天井用LED照明」が製品ジャンルとして確立してきたというわけだ。

 出力面での弱点が改善されるとLEDならではの強みが発揮できるようになる。LED照明を利用すると高圧水銀ランプに比べて、消費電力を3分の1から4分の1程度に削減できる他、長寿命であるため交換サイクルなども長くなる。そのためランニングコストを大きく削減できるのだ。

 加えて、LED照明は電子制御が可能であるため、調光や調色、ゾーンコントロールなどを容易に行える。照明の使用環境に新たな付加価値をもたらすことができる他、省エネの切り口で考えても、必要のない明るさを随時抑えることで、さらに電力使用量を下げることが可能になる。

 これらの利点を持つことから、水銀規制を機に、他の照明設備も含めてLED化を進めようと動きが活気付いている。2015年11月25〜27日に東京ビッグサイトで開催されている「INCHEM TOKYO 2015」内展示会「ECO-MAnufacture」では、高天井用LED照明を中心に照明各社がアピールする姿が目立った。

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