バイオマス発電+人工光合成で一歩先へ、海洋エネルギーの挑戦も続くエネルギー列島2015年版(41)佐賀(1/4 ページ)

家庭から出る廃棄物を活用するプロジェクトが佐賀市で進んでいる。下水と生ごみから電力を作り、同時に発生するCO2を人工光合成に利用して野菜の栽培や藻類の培養に生かす。沖合では海洋エネルギーの実証実験を進める一方、田んぼでは稲を栽培しながら太陽光発電に取り組む。

» 2016年02月02日 09時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

 全国の市町村の中でも佐賀市が取り組むバイオマス分野のプロジェクトは先進的だ。実施する場所は市内の2カ所にあって、1つは「佐賀市下水浄化センター」である。人口23万人の佐賀市の下水処理を一手に担う浄化センターでは、2011年からバイオガスを利用した発電事業を続けている(図1)。

図1 「佐賀市下水浄化センター」のバイオガス発電設備(左上)、バイオガス活用の流れ(下、画像をクリックすると拡大)。出典:佐賀市環境部

 下水の処理工程で生じる汚泥を使ってバイオガスを生成するだけではなく、食品廃棄物などを汚泥に加えることでバイオガスを多く発生させて発電量を増やしている。16基で合計400kW(キロワット)のガスエンジン発電機を利用して、年間に340万kWh(キロワット時)の電力を供給することができる。一般家庭の使用量(年間3600kWh)に換算して950世帯分に相当する。

 さらにバイオガスの生成に伴って発生するCO2(二酸化炭素)を分離・回収・利用するプロジェクトを2015年5月に開始した。バイオガスの製造プラントにCO2分離・回収設備を加えてCO2を回収した後に、そのCO2を野菜の栽培や藻類の培養に利用する(図2)。太陽光とCO2による人工光合成の試みだ。

図2 バイオガス中のCO2分離・回収・利用の実証事業(画像をクリックすると拡大)。出典:佐賀市ほか

 バイオガスの生成後に残る液体には窒素とリンが豊富に含まれているため、野菜や藻類の肥料を作ることもできる。培養する藻類はミドリムシ(学名:ユーグレナ)で、栄養補助食品やバイオ燃料になる。CO2を吸収して光合成で成長するため、再生可能エネルギーの中でも温室効果ガスの削減効果が大きい。このプロジェクトは国土交通省が支援する「下水道革新的技術実証事業」にも選ばれた。

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