水素を吸収・貯蔵・放出できる合金、建物内の余剰電力を最大限に生かす蓄電・発電機器(1/2 ページ)

清水建設が「水素吸蔵合金」とエネルギー管理技術を組み合わせて、建物内の電力と熱を最適に利用できるシステムを開発する。水素貯蔵合金は1000倍以上の容量の水素ガスを吸収・貯蔵・放出できるため、次世代の蓄電池として期待がかかる。福島県に実証システムを構築して効果を検証する。

» 2016年03月07日 11時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

 清水建設が開発するのは、建物付帯型の水素エネルギー利用システムである。太陽光などの再生可能エネルギーで作った電力のうち、建物内で消費できなかった余剰電力を最大限に活用できるようにする。

 システムの中核になるのは「水素吸蔵合金タンク」である。余剰電力を使って製造した水素を貯蔵・放出して、燃料電池で電力と熱を供給する仕組みだ(図1)。蓄電池と同様の役割を果たせることから、天候によって出力が変動する再生可能エネルギーの電力を安定化させる用途にも適用できる。

図1 建物付帯型の水素エネルギー利用システム。出典:清水建設

 水素吸蔵合金は気体の水素を輸送・貯蔵する技術の1つとして開発が進められている(図2)。金属には水素に反応しやすいものと反応しにくいものがある。反応しやすい金属は水素を吸収する能力が高くて、放出する能力が低い。逆に反応しにくい金属は水素を吸収する能力が低くて、放出する能力が高い。両方のタイプの金属を使って合金を作ると、水素の吸収・放出能力ともに高い性質が生まれる。

図2 将来に向けた水素の輸送・貯蔵技術(画像をクリックすると拡大)。出典:資源エネルギー庁

 国内では産業技術総合研究所(産総研)が10年ほど前から水素貯蔵合金の研究開発に取り組んできた(図3)。水素貯蔵合金の課題は装置の大きさと製造コストにある。清水建設は産総研と共同で、合金の材料や配合比を変えながらコンパクト化とコストダウンを図る。

図3 水素吸蔵合金を利用した貯蔵システムの実証例。出典:産業技術総合研究所

 水素の吸収能力が高い金属にはチタン、マグネシウム、ランタンなどがあり、放出能力が高い金属には鉄、コバルト、ニッケルなどがある。産総研ではランタンとニッケルを組み合わせた水素吸蔵合金を開発している。

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