水素吸蔵合金を使うと、気体の水素を常温・常圧の状態で1000倍以上の容量まで貯蔵することができる。水素の貯蔵方法には気体のまま圧縮する方法や、マイナス250度以下の低温で液化する方法もある。圧縮すると150倍程度、液化すると800倍程度の容量まで水素を貯蔵することが可能だ。こうした方式と比べて水素吸蔵合金は貯蔵容量が大きく、常温・常圧で扱えるメリットもある。
さらに水素吸蔵合金は水素を吸収する時に熱を放出する一方、逆に水素を放出する時には熱を吸収する特性がある(図4)。この熱のエネルギーが大きいために、建物内の空調などに熱を利用することができる。放出した水素を使って燃料電池で電力と熱を供給する以外に、水素吸蔵合金の排熱と吸熱を生かしてエネルギーの利用効率を高めることが可能になる。
清水建設は独自に開発した「スマートBEMS(ビル向けエネルギー管理システム)」を使って、水素貯蔵合金タンクと燃料電池を組み合わせた水素エネルギー利用システムを構築する。福島県の郡山市にある産総研の「福島再生可能エネルギー研究所」の構内に実証システムを設置する予定だ(図5)。
今年の秋までにシステムの設置を完了して、2018年3月まで実証運転を続ける。その結果をもとに実用レベルの水素エネルギー利用システムを開発して、東京オリンピック・パラリンピックが開催される2020年までに実際の建物や市街地に導入することを目指す。国が推進する水素社会を新しいシステムで広げていく。
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