豚の排せつ物からバイオ燃料を、火山の島では地熱発電と水素製造もエネルギー列島2015年版(46)鹿児島(1/4 ページ)

鹿児島県は再生可能エネルギーの宝庫だ。太陽光・風力・中小水力発電の導入量は全国でトップクラスに入り、バイオマスと地熱発電も広がってきた。木質バイオマス発電のほかに、豚の排せつ物や藻類からバイオ燃料を生産する。火山がある離島では地熱発電の電力で水素を製造する構想がある。

» 2016年03月08日 09時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

 鹿児島県には離島を含めて水力発電所が44カ所、風力発電所が25カ所に広がっている(図1)。太陽光では2013年の運転開始時に日本一の規模を誇った「鹿児島七ツ島(ななつじま)メガソーラー発電所」が発電能力70MW(メガワット)で稼働中だ。さらに原子力では「川内(せんだい)原子力発電所」が震災後に初めて再稼働して注目を集めた。

図1 鹿児島県内の発電所(甑島以外の離島は省略。2015年3月時点)。出典:鹿児島県企画部

 その川内原子力発電所から10キロメートルほど離れた川沿いに、製紙会社の中越パルプ工業が運営する川内工場がある。広い工場の敷地内では、九州で最大級の木質バイオマス発電所が2015年11月に運転を開始した(図2)。地域で発生する間伐材などを燃料に使って、発電能力は23.7MWに達する。

図2 中越パルプ工業が川内工場に建設した木質バイオマス発電設備。出典:薩摩川内市企画政策部

 年間の発電量は1億5400万kWh(キロワット時)を想定している。一般家庭の使用量(年間3600kWh)に換算して4万3000世帯分の電力になり、立地する薩摩川内市の総世帯数(4万6000世帯)に匹敵する。売電収入は1年間で48億円にのぼる見通しだ。

 木質バイオマス発電所の運転開始に合わせて、中越パルプ工業と取引関係にある地元の木材会社が燃料になる木質チップの製造工場を市内に新設した。伐採した木材から建築用の素材を作るのと合わせて木質チップを製造する。バイオマス発電で課題になる燃料の安定供給を図りながら、地域に新たな雇用も生み出している。

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