神奈川県の京浜臨海地区で、低炭素な水素サプライチェーンの構築に向けた産学連携の実証事業が始まる。神奈川県、トヨタ、岩谷産業、東芝などが連携し、再生可能エネルギーを利用したCO2フリーな水素の製造と貯蔵、そして利用までを含んだ水素サプライチェーンを構築する。約4年かけて課題となるコストの部分やエネルギーのマネジメント、CO2削減効果などを検証する。
神奈川県の京浜臨海地区で、低炭素な水素サプライチェーンの構築に向けた実証事業が本格的に始動する。神奈川県、川崎市、横浜市、岩谷産業、東芝、トヨタ自動車の6者による産学連携の体制で取り組む実証で、環境省の実施する「平成27年度 地域連携・低炭素水素技術実証事業」の委託事業として行う。実証期間は2015〜2018年度の4カ年事業だ。
6者は2015年9月から実証内容の検討を進めてきたが、このほどその詳細が固まった。再生可能エネルギーを利用したCO2フリーな水素を活用するのが特徴で、同時のその貯蔵、利用までを含んだ水素サプライチェーンを構築する。具体的なコストやCO2削減効果、運用面の課題など、さまざまな視点から実際的な水素の利活用を検証していく計画だ。2016年3月14日に横浜市内で開催した共同記者会見では、実証事業の詳細や今後のスケジュールなどが公開された(図1)。
実証ではまず横浜市の沿岸部にある「横浜市風力発電所(通称:ハマウィング)」の敷地内に、水を電気分解して水素を製造する装置と、この水素の貯蔵するタンクと圧縮装置を整備する。風力発電による電力で製造された水素は、貯蔵した後に圧縮装置を利用して専用車両に充填。京浜臨海部の市場や倉庫に運搬して、そこで実際の業務に導入する燃料電池フォークリフトの燃料として使用する。これが実証の概要だ(図2)。
今回構築する水素サプライチェーンを事業を上流から順に見ていく。まず、再生可能エネルギーによる発電設備としてこのプロジェクトの根幹を担うハマウィングは、住民や協賛企業の出資によって設立された風力発電設備だ(図3・4)。2007年3月から稼働を開始している。Vestas社製の高さ78メートル、定格出力1980kW(キロワット)の風車を利用していて、設備稼働率は12.4%、年間発電量は約220万kWh(キロワット時)を見込んでいる。
そしてこのハマウィングによって風力から生み出された電力は、主に3つの方法で使われる。
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