海外産の安価な水素を日本へ運ぶ、実現に向け技術実証を開始エネルギー管理

川崎重工業、岩谷産業、シェルジャパン、電源開発の4社は2016年2月22日に水素サプライチェーン構築を推進する「HySTRA」を設立した。同年4月1日より本格的に実証事業を開始する。褐炭ガス化技術と液体水素の長距離輸送技術などの実証を進め、実用化課題を2020年までに抽出する計画だ。

» 2016年04月06日 07時00分 公開
[陰山遼将スマートジャパン]

 水素社会を実現するためには水素の安定的な製造・調達に加え、水素を使用する場所に効率的かつ有効的に供給できるサプライチェーンの構築が必須だ。これに向け川崎重工業、岩谷産業、シェルジャパン、電源開発(J-POWER)

の4社は2016年2月22日に水素サプライチェーン構築の推進組織「HySTRA」を設立し、2016年度から実証事業を開始した。

 同実証は川崎重工、岩谷産業、電源開発の3社が、2015年6月から新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のもとで進めてきた「未利用褐炭由来水素大規模海上輸送サプライチェーン構築実証事業」を、実施主体をHySTRAに移管して取り組むもの。将来の水素社会を見据え、海外から運んだ液化水素を日本で活用するという大規模な水素サプライチェーンの構築を視野に入れたプロジェクトであるというのが特徴だ(図1)。

図1 HySTRAが取り組む技術実証の概要。水素サプライチェーンの構築に貢献する一部の技術開発を担当する 出典:川崎重工業

 今後HySTRAのもとで進める具体的な技術実証の内容は大きく2つに分かれる。1つ目が電源開発が担当する「褐炭ガス化技術」の実証だ。褐炭とは若い石炭で世界に広く大量に埋蔵されている未利用資源だ。水分量が多く乾燥すると自然発火しやすいため輸送が困難であり、現地の発電でしか利用されていない。この褐炭の埋蔵量が多いオーストラリアなどの海外地域で、経済性に優れた水素を製造する技術を開発することが実証の目的だ。電源開発は国内で石炭ガス化複合発電(IGCC)に取り組んでおり、ガス化技術のノウハウを持つ。

 技術実証の2つ目の内容が「液化水素の長距離大量輸送技術」および「液化水素荷役技術」だ。海外で製造した水素を、効率的かつ安全に日本に運搬するために必要な技術の開発に取り組む。水素関連技術を持つ川崎重工業と岩谷産業、そして液化天然ガス(LNG)のサプライチェーンやLNG船の運航に実績があるオランダのロイヤルダッチシェル社の日本法人であるシェルジャパンが共同で技術実証を担当する。

 HySTRAでは2020年度までに各項目の技術実証と、商用化に向けた課題の抽出を行う計画だ。

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