茨城県の太平洋沿岸は風況が良いことでも知られている。中でも最南端の神栖市(かみすし)に数多くの風力発電所が集まっている。臨海工業地帯の中心に位置する鹿島港の周辺だけでも、6つの風力発電所で合計20基の大型風車が稼働中だ(図11)。
その中で最も新しい「鹿島港深芝風力発電所」は1基の風車で5MWの発電能力がある。日立製作所が開発したダウンウィンド型の風車を採用して2015年8月に運転を開始した(図12)。ダウンウィンド型は風車の後方から風を受けて回転する方式で、山の斜面や海の近くに設置するのに向いている。5MWの大型機では初めての商用運転だ。風車の羽根の回転直径は126メートルに達する。
鹿島港の南側には日本最大の洋上風力発電所「ウィンド・パワーかみす第1・第2洋上風力発電所」が稼働中だ。臨海工業地帯の護岸に沿って合計15基の風車が並び、発電能力は30MWに達する。さらに近くの沖合では、5MWの大型風車20基による大規模な洋上風力発電所の建設プロジェクトも進んでいる(図13)。
稼働中の洋上風力発電所を運営するウィンド・パワー・エナジーが新たにSBエナジーとオリックスと共同で鹿島港の沖合に建設する計画だ。発電能力は100MWにのぼり、年間に2億4500万kWhの電力を供給できる。6万8000世帯分の電力になり、神栖市の総世帯数(約4万世帯)の1.7倍に匹敵する。現在のところ運転開始の時期は未定で、これから環境影響評価の手続きを開始する段階にある。
鹿島港の洋上風力発電の開発プロジェクトは茨城県の公募で2012年に始まった。ウィンド・パワー・エナジーと丸紅が発電事業者に選ばれて、それぞれ340万平方メートルに及ぶ水域に20〜25基の大型風車を設置する計画になっている(図14)。両方を合わせた発電能力は最大で250MWに達して、世界でも有数の洋上風力発電所になる見通しだ。
現在のところウィンド・パワー・エナジーが20基の建設計画を発表したにとどまり、一方の丸紅は具体的な計画を公表していない。当初の構想どおりに実現すれば、全体の発電量は年間に6億5700万kWhに達する。一般家庭で18万世帯分に相当して、茨城県の総世帯数(112万世帯)の16%をカバーできる。洋上風力の拡大で再生可能エネルギーによる電力の自給率はますます高くなっていく。
2015年版(8)茨城:「メガソーラーが50カ所以上で動き出す、風力は洋上へ、バイオマスは森林から」
2014年版(8)茨城:「太陽光発電で全国2位、メガソーラーが港や湖から線路沿いまで広がる」
2013年版(8)茨城:「洋上風力発電が広がる臨海工業地帯、農山村には太陽光とバイオマス」
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