2017年4月から開始する予定の「ネガワット取引」を、どのようなスキームで実施するのか。政府の委員会で検討が進み、運営体制の大枠が固まりつつある。節電した電力に対する報奨金や小売電気事業者が受け取る補填金の算定方法など、ネガワット取引に伴う料金と情報の流れも規定する。
第62回:「電力の契約変更まもなく100万件を突破、システムの不具合で料金計算に影響も」
政府は電力の小売自由化と節電対策の両方を推進する目的で、2017年度から「ネガワット取引」を可能にする方針だ。ネガワット取引は夏の昼間など電力の需給状況が厳しくなる時間帯を対象に、需要家に対して節電を要請して、節電した分の電力を小売電気事業者に供給する仕組みである。
実施に向けてネガワット取引の具体案が固まってきた。取引にあたっては「ネガワット事業者」と呼ぶ専門の事業者が需要家を集める体制になる。ネガワット事業者が需要家と契約を結んで節電に対する報奨金を支払う一方、需要家が契約している小売電気事業者にも需要の抑制分に応じた補填金を支払うスキームだ(図1)。
こうした仕組みを整備することによって、ネガワット取引で余った電力を、必要とする需要家に分配することが可能になる。たとえば小売電気事業者が発電事業者から供給を受けた電力のうち20%をネガワット取引に回せば、追加の電力を必要とする他の小売電気事業者が買い取って需要家に供給できる(図2)。
ネガワット取引で供給する電力量を事前に確定するためには、需要家が通常の状態で使用する電力の大きさを「ベースライン」として設定する必要がある。このベースラインに対して節電可能な量を需要家ごとに決めて、ネガワット取引に供給する電力量が確定する(図3)。
実際に節電した電力量に応じてネガワット事業者から需要家に報奨金を支払ったうえで、節電によって販売量が少なくなった小売電気事業者にも補填金を支払う。報奨金や補填金の単価は事業者と需要家のあいだで自由に設定できる。
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