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» 2016年07月20日 13時00分 UPDATE

電力自由化で勝者になるための条件(2):競争力の決め手は電源確保と顧客管理、提携戦略も重要 (1/2)

小売事業を検討するにあたって、電源の確保と顧客管理体制の構築をどのように進めるかが最も重要である。他の事業者との連携を含めた需給管理業務の組み立て、長期的な事業展開を見通した販売・サービス面の戦略も事前に準備しておくことが望ましい。

[平松 昌/エネルギービジネスコンサルタント,スマートジャパン]

連載第1回:「電力市場17兆円をめぐる現状、参入した事業者のチャンスと課題」

 国から小売電気事業者のライセンスを取得するためには、電力の需給管理業務をはじめとして、需要家の苦情や問い合わせに対応する体制整備が求められる。新規に参入する事業者にとってハードルは高い。ただしライセンスを取得するに際して事業の規模は問わない、というのが監督官庁の資源エネルギー庁や審査を担当する電力・ガス取引監視等委員会のスタンスである。

 例えば最初のうちは自社の本社や拠点に限定して高圧の小売供給を行う前提で、コンパクトに電力事業を開始する方法がある。電源を確保する面においても、参入した当初は日本卸電力取引所(JEPX)に加盟できないケースが考えられるが、それでも電力の調達を代行してくれる事業者がある。電力会社による常時バックアップを含めると、小売事業に参入しやすい環境は整ってきている。

 すでに参入した小売電気事業者のパターンは3つに分類できる(図1)。

1.BG(バランシンググループ)を形成し、従来の高圧を対象にした事業者が代表契約者として電源の確保および電力の需給管理を担当する(小売電気事業者は販売に注力)

2.小売電気事業者が単独で事業を実施するが、需給管理業務は外部に委託する

3.小売電気事業者がすべての業務を単独で実施する

図1 小売電気事業者の販売方式と電源確保

 第1のパターンでは、需給管理業務はもとより、顧客管理系の業務まで含めて委託することが考えられる。業務に必要なシステムを構築してもらえる点で、当初の参入ハードルを下げることができる。需給管理については、BGを取りまとめる事業者が電源のコストに上乗せして提供するサービスもある。

 小売全面自由化に伴う新制度では、小売電気事業者の義務として「計画値同時同量」を遂行しなくてはならない。計画どおりの需給管理を実施できなかった場合には、送配電事業者にペナルティを支払う必要がある。BGを取りまとめる事業者が需給管理を代行することで、小売電気事業者にとっては仕入れコストは通常より上昇するものの、ペナルティを払うリスクは回避できる。

 第2のパターンでは需給管理業務だけを委託し、顧客管理の体制やシステムは自社で構築する。さまざまな事業を展開するうえで重要な顧客資産を守るという意味において適切な選択肢となる。

 第3のパターンは従来から高圧事業を展開してきた事業者か、今後に向けて本格的な事業展開を考えている大企業をバックにした事業者などが該当する。独立系の小売電気事業者やニッチ市場を狙うベンチャー系の事業者の一部も含まれる。

 当初から第3のパターンで参入するのも1つの選択だが、想定どおり需要家を獲得できて、電力事業を長期的に継続する見通しが立ってから自社で体制を組み立てる方法もある。その場合には、第1のパターンのようにBGの中で事業を展開するよりも、第2のパターンのように需給管理業務を委託した上で複数の電源から卸供給を受けるほうが収益率を高めやすい。

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