次世代の石炭火力発電が試運転、瀬戸内海の島で発電効率40%超を目指す:蓄電・発電機器(2/2 ページ)
IGCCで発電効率を高めることができれば、石炭火力で最大の問題点になっているCO2(二酸化炭素)の排出量も低減する。現在の石炭火力で主流の「亜臨界圧(Sub-C:Sub-Critical)」と呼ぶ発電方式と比べて、CO2の排出量を約20%削減できる見通しだ(図6)。次世代の石炭火力発電にIGCCが求められる理由の1つである。
図6 石炭火力発電のCO2排出量(発電能力100万キロワットの場合)。Sub-C:亜臨界圧、USC:超々臨界圧、A-USC:先進超々臨界圧、IGCC:石炭ガス化複合発電、IGFC:石炭ガス化燃料電池複合発電。出典:資源エネルギー庁
大崎クールジェンでは実証試験設備を運転して、発電効率や排気ガス中の有害物質の濃度などの基本性能を評価する。加えて石炭の種類の適合性や発電設備の耐久性、運用性や経済性についても検証する予定だ(図7)。経済性の点では発電コストが現在の商用機と同等以下になることを目指す。
図7 実証試験の目標。HHV:高位発熱量(ガス燃焼時の蒸発熱を含む発熱量)、SOx:硫黄酸化物、NOx:窒素酸化物。出典:大崎クールジェン
IGCCの実証試験は2018年度末まで約2年間かけて実施する。並行して第2段階の実証試験設備の建設も進めていく。第2段階ではIGCCで発生させたガスからCO2を分離・回収する設備の実証に取り組む計画だ(図8)。
図8 「大崎クールジェンプロジェクト」の全体像とスケジュール(それぞれ画像をクリックすると拡大)。出典:大崎クールジェン
さらに第3段階ではガスから水素を抽出して燃料電池で発電する「石炭ガス化燃料電池複合発電(IGFC:Integrated coal Gasification Fuel Cell combined cycle)」に挑む。IGFCは発電効率をLNG火力に匹敵する55%程度まで高めることができる。究極の石炭火力発電の技術である。2021年度にIGFCの実証試験を実施して、10年間の大崎クールジェンプロジェクトが完結する。
大崎クールジェンは中国電力とJ-Power(電源開発)の合弁事業で、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)から支援を受けて2012年度に開始した。実証試験の場所は中国電力が運営する石炭火力の「大崎発電所」(2011年12月から運転休止中)の構内にある。
- 石炭火力で発電効率50%に、実用化が目前の「石炭ガス化複合発電」
火力発電に伴うCO2排出量を削減する有力な技術の1つが「石炭ガス化複合発電(IGCC)」である。発電効率の高いIGCCでは従来の石炭火力と比べてCO2が2割も少なくなる。広島県の火力発電所で実証試験設備の建設が進み、2020年には50万kW級の発電設備が福島県内で稼働する予定だ。
- 進化を続ける火力発電、燃料電池を内蔵して発電効率60%超に
2030年代に向けて火力発電の仕組みが大きく変わる。国を挙げて取り組む次世代の火力発電は燃料電池を内蔵する複合発電(コンバインドサイクル)がガス・石炭ともに主流になっていく。2030年代には発電効率が60%を超える見通しで、CO2排出量も現在と比べて2〜3割は少なくなる。
- 石炭をガス化する第2世代、LNG火力とともに複合発電へ
2020年代に火力発電の中核になる技術が「複合発電」である。ガスタービンと蒸気タービンの2種類を組み合わせて発電効率を向上させる。石炭もガスに転換してから発電に利用する。現在はガスの燃焼温度が最高で1600度だが、2020年には1700度に引き上げて発電効率を60%に近づける。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.