岐路に立つ固定価格買取制度、2017年度に実施する改正に多くの難題自然エネルギー(2/2 ページ)

» 2016年10月05日 09時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]
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事業用の太陽光は2020年度に16円へ

 新しい価格決定方式で最も大きな影響を受ける事業用の太陽光を例にとると、目標設定の根拠になるのは産業用の電気料金だ(図4)。電気料金と同程度の価格水準になれば、発電事業者が固定価格買取制度に頼らずに、火力発電などと同じように小売電気事業者に売電できる状態になる。現在の産業用の電気料金の単価は1kWh(キロワット時)あたり15円程度である。

図4 買取価格の目標設定イメージ(事業用太陽光の場合)。出典:資源エネルギー庁

 10月4日の委員会では太陽光発電の価格目標を設定するにあたって2種類の根拠を示した。1つは発電コストで、事業用(非住宅用)は2020年度に14円/kWh、2030年度に7円/kWhを目指す(図5)。住宅用は2019年度の買取価格が家庭用の電気料金並みに下がることが目標だ。家庭用の電気料金の単価は平均して25円/kWh程度である。

図5 太陽光発電の価格目標の根拠。発電コスト(上)、発電システム費用(下)。出典:資源エネルギー庁

 もう1つの根拠になるのは太陽光発電システムのコストである。事業用は2020年度に1kWあたり20万円に、2030年度に10万円まで引き下げる。2016年度の買取価格を決定した時点では30万円/kWだったことから、2030年度までに3分の1に低減する挑戦的な目標だ。この目標を前提に2017年度以降の買取価格を決定した場合には、事業用の太陽光は2016年度の24円から2020年度には16円あたりまで下がる。

 同様に風力に対しても、2030年度までに発電コストを8〜9円/kWhに低減する案が委員会で示された。現時点の風力の発電コストを13.7円/kWhと想定して、今後さらにシステム費用と運転維持費が低減することを見込んでいる。

 しかも従来は風力発電の設備利用率(発電能力に対する実際の発電量)を20%に設定していたが、直近の実績値をもとに2017年度から25%に引き上げて買取価格を決定する方針だ。この設備利用率の改善だけでも、買取価格を2割近く下げる要因になる。

 風力をはじめ地熱・水力・バイオマスの買取価格は2017年度から複数年度を一括で決める方式に変わる(図6)。このうち風力だけは価格が低減していくモデルになる。実際に何年間にわたって、どのくらい下げるのか。価格目標の設定根拠と合わせて十分な議論が必要だ。

図6 複数年度の価格を一括で決めるイメージ(3年先まで決定する場合)。出典:資源エネルギー庁

 このほかにも事業用の太陽光に導入する入札制度の実施方法を決めなくてはならない。入札の対象になる発電設備の規模をはじめ、入札量や上限価格の決定方法、買取期間の設定方法など難題が多い(図7)。入札の実施方法を規定したガイドラインの整備も必要になる。

図7 入札制度の実施イメージ(画像をクリックすると全体を表示)。出典:資源エネルギー庁

 委員会は2017年3月までに合計5回の開催を想定している。第2回で入札制度を検討して、第3回で複数年度の価格決定方式を議論する。さらに1月から2月にかけて2017年度の買取価格を大筋で固めたうえで、3月に最終案をとりまとめる予定だ。新しい価格決定方式が再生可能エネルギーの導入量を増やす有効な対策になることを願いたい。

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