モジュール単位の異常を遠隔監視で発見できる、新しい通信技術を開発太陽光

東京大学は太陽光発電所の稼働率向上に貢献する新しい通信技術「PPLC-PV」を開発した。同技術を利用した通信機を太陽電池モジュールに組み込むことで、不具合や異常を遠隔からモジュール単位で把握できるようになるという。

» 2016年11月10日 09時00分 公開
[陰山遼将スマートジャパン]

 東京大学は2016年11月6日、太陽光発電所の稼働率向上につながる新しい通信技術を開発したと発表した。同通信技術を利用した通信機を太陽電池モジュールに組み込むことで、不具合や異常をモジュール単位で遠隔から把握できるようになるという。

 開発した通信技術は「PPLC−PV」(PA Pulse Power Line Communication for Series−Connected PV Monitoring)と呼ぶもので、東京大学大学院情報理工学系研究科の落合秀也講師が開発した。

 太陽光発電設備は、モジュール1枚が正常に発電しなくなると、全体の発電効率が1枚の欠損以上に低下する可能性がある。一方、全体の出力に異常が観測されたとしても、目視ではモジュール単位で異常を把握できないことが多く、テスターなどをつかって直接調査を行うなどコストが掛かる。当然ながら異常が発生してからその発見、原因の特定、修繕といったプロセスに要した時間の分だけ、発電ロスが生まれてしまう。

 今回東京大学が発明した通信技術PPLC−PVは、一般的な20段以上の太陽電池モジュールの直列接続線に、パルス状の電流を流し込むことを可能にするもの。このパルス状の電流と、各モジュールに組み込んだモニタリング機能も搭載するPPLC-PV通信機によって、モジュールごとの電圧や温度などの情報を把握する。この情報はPPLC-PV通信機から送電ケーブルを利用して送信する。これにより、電圧や温度などの情報を集約箱やパワーコンディショナーの周辺で読み取れるようにする仕組みだ(図1)。

図1 PPCL-PVの利用イメージ 出典:東京大学

 こうした情報を最終的にゲートウェイなどを通じてクラウド上にアップロードすることで、各モジュールの稼働状況を遠隔からの自動監視することも可能だ。これにより、モジュール異常に対して迅速な対応がしやすくなるため、結果的に発電所の稼働率向上が見込めるとしている。

 東京大学ではこうしたモジュール監視の手法として、PLCなどの一般的な電力線通信を利用する方法も考えられるが、直列接続にはそのままでは使えない他、直列向けに改良をしたとしても定電流源として動作する太陽電池への適用は難しいとする。今回開発したPPLC-PVおよび通信機は、汎用の電子部品による単純な構成で送受信機能を実装価格面でも優位性があるとしている。

 また、モジュールに対して信号を送ることができるという機能を活用し、火災などの非常時にモジュールを電気的に切り離すなど、発電所の安全性向上に寄与する使い方も可能としている。

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