再エネ100%を記録したポルトガル、ADRで需給調整に挑むエネルギー管理(1/2 ページ)

2016年5月に一時的に電力消費における再生可能エネルギー100%を達成するなど、積極的なエネルギーシフトを図っているポルトガル。NEDOおよびダイキンはその首都リスボンで、自動デマンドレスポンス(ADR)による電力需給の安定化を目的とした実証実験を開始する。ADRで再エネの導入拡大と電力需給のバランスを取ることが狙いだ。

» 2016年11月24日 09時00分 公開
[陰山遼将スマートジャパン]

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は2016年11月22日、ポルトガルの国立エネルギー地質研究所(LNEG)と共同で、再生可能エネルギーの大量導入に伴う電力需給安定化を目的とした自動デマンドレスポンス技術の実証事業を実施することに合意したと発表した。同年11月21日に基本協定書(MOU)を締結し、さらにNEDOとリスボン市は同市の施設を実証サイトとすることに合意する施行協定書を締結している。

 実証事業はダイキン工業を委託先として、ポルトガル側パートナーであるEDP、EFACEC、everis Portugalと共同で、リスボン市庁舎など複数のビルに蓄冷機能を有するビル用マルチエアコンを導入。このエアコンは電力の供給量に応じて電力消費の上限を自動で制御できるデマンドレスポンス機能を備える。前日の天候や日々のエアコンの使用状況などから電力需要の推移を予測し、これらのエアコンの電力消費量を自動で調整する制御システムと連動させる。こうして空調自動デマンドレスポンス(ADR)システムを構築する。

 さらに現地の電力小売事業者および複数の中小規模の再生可能エネルギー発電施設をアグリゲーターとしてとりまとめ、バーチャルパワープラント(VPP)を構築する事業者が、電力供給の調整を行う。

図1 実証のイメージ(クリックで拡大) 出典:NEDO

 従来の手動のデマンドレスポンスは、電力が不足した際に、供給側が利用者に通知を送り電力使用を抑えるものが主流だった。しかしこの場合、対応が利用者側に委ねられ、電力需給の調整を確実に行えないという懸念がある。今回実証する自動デマンドレスポンスは、電力の供給が不足した場合に電力消費の上限を自動で制御し、電力需給のバランスを調整する。こうした自動化によって、出力が変動する再生可能エネルギーが大量に導入される状況でも電力需給の安定化を図る。

 NEDOではこの検証結果を踏まえて、ポルトガルをはじめとする欧州他地域におけるデマンドレスポンスによる電力需要調整機能の事業性を評価する考えだ。

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