再生可能エネルギーの発電コストが下がり、買取制度から自家消費へ2017年のエネルギートレンド(1)(1/4 ページ)

2017年に再生可能エネルギーは大きな節目を迎える。固定価格買取制度の改正によって、価格の引き下げと発電コストの低下が進む。電気料金の水準よりも低く抑えて自家消費を促し、買取制度に依存しない導入環境を確立する。営農型の太陽光発電など地域の産業と連携する試みも広がっていく。

» 2017年01月05日 07時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

 固定価格買取制度(FIT)が始まって4年が経過するあいだに、再生可能エネルギーの導入量は順調に伸びてきた。この間に運転を開始した発電設備の規模は3000万kW(キロワット)を超えた(図1)。大型の原子力発電所30基分を上回り、国内の電力源として大きな役割を担い始めている。

図1 固定価格買取制度による再生可能エネルギーの導入・買取・認定状況(2016年8月時点、画像をクリックすると拡大)。各欄の下段の数字は前月比。バイオマスは燃料の比率を反映。出典:資源エネルギー庁

 再生可能エネルギーによる電力の供給量は増え続けて、2015年度には国全体の4.7%まで拡大した(図2)。従来の水力発電と合わせると14.3%になり、2020年度には20%を超える勢いだ。今後も原子力を上回る規模の電力を供給していく。

図2 電力会社10社の電源構成比(他社からの受電を含む発電電力量ベース、画像をクリックすると1955年度から表示)。LNG:液化天然ガス、LPG:液化石油ガス。出典:電気事業連合会

 政府が2030年度の目標に掲げるエネルギーミックスでは、CO2(二酸化炭素)を排出しない再生可能エネルギーと原子力で44%まで高める計画だ。いまや再生可能エネルギーだけで30%以上を供給できる状況が見えてきた。原子力の再稼働が目標どおりに進まなくても、電力の供給量とCO2の削減量に支障は生じない。

 これまで再生可能エネルギーの問題点に挙げられてきた2つの課題がある。1つは天候によって発電量が変動すること、もう1つは発電コストが高いことだ。発電量の変動を解決する手段はいろいろある。地域間で需要と供給を調整するほかに、企業や家庭で自家消費を増やしていく。

 FITの買取価格が電気料金を下回る水準になると、売電よりも自家消費のメリットのほうが高くなる。再生可能エネルギーで作った電力を自家消費して、電気料金を安く済ませるようになる日は遠くない。国全体で買取費用の拡大を防ぎ、電気料金に上乗せする賦課金の上昇を抑える必要がある(図3)。

図3 固定価格買取制度による買取費用と賦課金。出典:資源エネルギー庁

 政府は再生可能エネルギーの拡大策を2017年度に大きく転換する。これまで買取制度に依存して導入量を伸ばしてきた状態から、自家消費や地産地消による「自立できる再生可能エネルギー」を目指す(図4)。そこで最も重要な対策が発電コストの低減だ。

図4 再生可能エネルギーの拡大に向けた課題と方向性。出典:資源エネルギー庁

 日本では再生可能エネルギーの発電コストが海外と比べて2倍近い水準にある。国土が狭くて土地代が高い問題はあるものの、いまだ市場が未成熟で競争が少なく、その一方で流通経路が複雑な構造になっていてコストの増加を招いている。こうした問題を解決していけば、発電コストを大幅に下げることは十分に可能だ。

 太陽光発電と風力発電のコストに対して政府の目標値がある。事業用(非住宅用)の太陽光発電のコストを2020年に14円/kWh(キロワット時)へ、さらに2030年に7円/kWhまで引き下げる(図5)。14円は企業向けの電気料金の単価と同じ水準になり、7円になると原子力や石炭火力の発電コストよりも安くなる。

図5 太陽光発電のコスト低減イメージ(画像をクリックすると拡大)。PCS:パワーコンディショナー、BOS:周辺装置。出典:資源エネルギー庁

 同様に住宅用の太陽光発電のコストも低下させて、2019年には売電価格を家庭向け電気料金の単価と同程度の24円/kWhまで引き下げる。さらに2020年代の早期に売電価格を11円/kWhまで下げることで、卸電力市場で取り引きする電力の単価と同等にする。

 すでに海外では太陽光発電による電力の取引価格が6円/kWhを切るケースも出始めている。太陽光をはじめ再生可能エネルギーの電力は、バイオマスを除けば燃料費がかからないからだ。発電設備を長期に運転すれば、安い単価で電力を供給しても採算がとれる。日本でも2017年度に改正するFITの新制度を通じて、発電コストの低減にはずみがつく。

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