再生可能エネルギーの発電コストが下がり、買取制度から自家消費へ2017年のエネルギートレンド(1)(2/4 ページ)

» 2017年01月05日 07時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

太陽光の買取価格がまもなく20円を切る

 太陽光発電の買取価格は2017年度に事業用が21円になり、FITを開始した当初の40円から5年間で半分の水準まで下がる(図6)。加えて発電能力が2000kW以上の大規模な発電設備には入札方式を導入して、21円以下の買取価格で取り引きする。もはや20円を切るのは時間の問題だ。

図6 太陽光発電の買取価格。事業用(上)、住宅用(下、画像をクリックすると拡大)。出典:資源エネルギー庁

 住宅用の太陽光発電の買取価格についても、3年後の2019年度に24円まで引き下げることが決まった。政府が太陽光発電のコスト目標に掲げた家庭向け電気料金の水準と同じだ。2020年代には電力を買うよりも太陽光発電で自家消費するほうが安く済む。住宅に太陽光発電を導入するインセンティブが再び大きくなっていく。

 太陽光発電の導入コストの多くを占めるのは太陽光パネルだ。このところパネルの価格低下が進んだことで、「過積載」の太陽光発電設備が増えてきた(図7)。発電した電力を送配電ネットワークに供給するためにはパワーコンディショナー(パワコン)が必要になる。パワコンの容量に対して100%を超える出力のパネルを設置する場合を過積載と呼んでいる。

図7 事業用の太陽光発電の過積載率(画像をクリックすると拡大)。出典:資源エネルギー庁

 太陽光パネルの出力は日中に最大になり、朝や夕方には低下する。日中に発電した電力がパワコンの容量を超えて余剰になっても、数多く設置した太陽光パネルで朝や夕方の発電量を増やすことができれば、1日の総発電量は多くなる。それだけ売電収入が増えて、パネルの導入コストを上回る状況になってきたわけだ。

 過積載が進んだ結果、太陽光発電の設備利用率(発電能力に対する発電量の割合)は年々上昇している。発電能力が1000kW以上の実績値を見ると、2015年7月〜2016年6月に運転を開始したケースでは設備利用率が15.1%になっている(図8)。1年前と比べて0.5ポイント高い。さらに2000kW以上の発電設備では16.3%に上昇する。

図8 事業用の太陽光発電の設備利用率。出典:資源エネルギー庁

 FITが始まった2012年度の時点の太陽光発電の設備利用率は12%を想定していた。当時の設備と比べて年間の発電量が25%以上も増えている。国土の狭い日本でも、土地を有効に利用して太陽光の発電量を拡大できる方法が広がってきた。

 その1つが農地を活用した営農型の太陽光発電だ。農地に支柱を立てて高い位置に太陽光パネルを設置したうえで、パネルの下では農作物も栽培する。太陽光を発電と農業の両方に利用することから「ソーラーシェアリング」と呼んでいる。全国各地に荒廃する農地が増えている中で、発電と農業による収入の増加を農地の再生につなげていく。

 最近では一般の農家が運営する小規模なソーラーシェアリングに加えて、企業による大規模な導入事例も増えてきた。典型的なプロジェクトが鳥取県の日本海側にある北栄町(ほくえいちょう)で始まっている。面積が1万8000平方メートルある農地に、4200枚の太陽光パネルを設置して2015年11月に運転を開始した(図9)。発電能力は1000kWで、現在のところ国内最大の営農型による太陽光発電設備だ。

図9 営農型の太陽光発電の導入事例(画像をクリックすると拡大)。鳥取県の「北栄ソーラーファーム」。出典:エナテクスファーム

 年間に105万kWhの電力を供給して、4200万円の売電収入を見込んでいる。太陽光パネルの下では、ビルの屋上緑化などに使う「常緑キリンソウ」を栽培して販売する。農作物の収入は売電と比べると小さいが、農地を活用して再生可能エネルギーを増やす効果は大きい。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.