空気熱源で90度の熱風、エネルギー消費を5割削減省エネ機器

三菱重工サーマルシステムズと関西電力、東京電力ホールディングス、中部電力の4社は、新型の高効率空気熱源ヒートポンプ式熱風発生装置を開発した。工場などの熱風利用工程へ利用できるヒートポンプシステムで、空気熱源を利用して90度の熱風を供給できる。

» 2017年02月20日 11時00分 公開
[長町基スマートジャパン]

 三菱重工サーマルシステムズと関西電力、東京電力ホールディングス、中部電力の4社は、このほど空気熱源で熱風供給温度90度を可能にした、高効率空気熱源ヒートポンプ式熱風発生装置「熱Pu-ton(ねっプートン)」を共同開発した。開発機は三菱重工サーマルシステムズが2017年6月から販売を開始する(図1)。

図1 出典:三菱重工サーマルシステムズ

 工場などで熱風を利用する乾燥工程などでは、化石燃料を使用した蒸気ボイラや熱風発生装置が広く使われており、ヒートポンプシステムの導入による省エネニーズがある。従来の高温ヒートポンプの多くは、工場の廃温水から熱回収する水熱源ヒートポンプまたは温水生成ヒートポンプであるため、冷温水を循環させる配管や空気熱交換器を設置する必要があり、コスト面やスペースの確保などの課題があった。

 今回開発した熱Pu-tonは、家庭用のルームエアコンと同様に、大気から熱を取り込む室外機と、熱風を直接生成できる室内機で構成。2個の圧縮機を直列に接続し圧縮機の仕事を分散することで圧縮機の損失を軽減し、高効率な熱風供給運転を実現した。同社によると空気熱源ヒートポンプとしては日本最高の熱風温度90度に対応、COP3.5の高効率を達成している。これにより、工場などの熱風利用工程へ、より簡単にヒートポンプシステムの適用が可能となる。

 これまでに、フィルムを張り合わせるドライラミネータに開発機を適用した実証試験では、従来システムに比べエネルギー消費量の約5割削減を達成した。さらに、液状材料から連続的に粉粒状製品を製造する噴霧乾燥装置にも適用し、乾燥品質に問題ないことを確認しているという。

 開発機はドライラミネータや食品などの乾燥温度帯60〜90度に対応する。また、既設の乾燥装置の給気を開発機で予熱するハイブリッド方式とすることで、90度より高温の熱風が必要となる乾燥工程にも適用することが可能だ。そのため、ラミネータやグラビア印刷機、噴霧乾燥装置、流動層乾燥装置など幅広い設備の給気予熱に適している。

 また、システムの構成が大気より熱を取り込む空気熱源ヒートポンプのため冷温水を循環させる配管の施工が不要で室外機の設置の自由度が高くなっている。さらに、吹出し温度を低下させないよう圧縮機回転数を制御し、長配管時の吹出し温度を確保した。そのため、室外機と室内機を接続する冷媒配管は片道50m(メートル)まで延長可能であり、室外機は室内機と離れた場所にも設置できる。

 このほか、高いエネルギー効率(COP3.5)と工場内での分散配置による配管ロスの低減により、集中配置が必要な蒸気加熱システムに比べ、ランニングコスト、エネルギー消費量、CO2排出量を約5割削減可能であることを実証試験で確認したとしている。

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