溶けた原料から直接作る太陽電池、効率19.9%蓄電・発電機器(3/3 ページ)

» 2017年03月21日 14時00分 公開
[畑陽一郎スマートジャパン]
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製造手法を変えると品質が高まる

 Direct Wafer技術を用いると、シリコン材料を無駄なく利用できる。だが、材料コスト以外にも利点があるという。品質と強度だ。

 まずは品質だ。多結晶シリコン太陽電池では、例えばスリップキャスト法を用いて、シリコン融液を冷却、直方体状の多結晶シリコンに変える。固化の際の収縮による熱応力を軽減するために、冷却には24時間程度を必要とする。すると「るつぼ」表面から不純物が溶け出して、シリコンの純度が低下する。

 Direct Wafer法でも不純物の混入はあるものの、わずか数秒で表面から1枚1枚ウエハーを凝固させるため、ウエハーに混ざり込む不純物の量が少なくなるという。

 転移クラスタの問題も解消できる。融液全体を固化させると、結晶のずれ(転位クラスタ)が固化後のブロック全体に広がる。Direct Wafer法で製造した多結晶シリコンセルではこのような現象が起きない。

 シリコン内に意図的に混ぜ込む不純物(ドーピング)についても、Direct Wafer法に優位性があるとした。不純物の濃度勾配をウエハー製造時に形成できる。これはキャスト法では不可能だ。

強度も高まる

 1366 Technologiesは、既存の太陽光発電システムに自社の太陽電池セルを組み込みやすくするため、セルの寸法や厚みを業界標準と同じになるよう決めている。「ウエハーの厚みは100〜120マイクロメートル(μm)だ」(同社)。

 直方体のシリコン結晶を切削してウエハーを作る一般的な手法では、ウエハーの厚みは均一になる。ところが、Direct Wafer法ではウエハーの厚みを位置によって変えられるという。

 現在のシリコンウエハーは薄く、セルの運搬やセルと電極の接合など、後工程中に破損する可能性が低くない。Lozen氏によれば、Direct Wafer法では、正方形のセルのフレームの厚さのみを厚くして、破損に備えることができる。

 「セルのほとんどの部分の厚さを100〜120μmに保ちながら、フレーム部の厚さのみを180〜200μmにできる。これを『3Dウエハー』と呼ぶ。太陽電池セル業界ではセルの厚みをますます薄くしようと努力しているため、3Dウエハー技術を適用することで、当社の競争力がより高まる」(同社)。

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