酸化物熱電モジュールの発電出力向上では、熱電素子の性能向上に取り組んだという。p型のカルシウム・コバルト酸化物素子は、加圧しながら焼結するホットプレス法により製造していたが、ホットプレス工程での組織制御を精密化する技術を開発。結晶粒の配列や大きさ、密度が改善され、熱電素子の出力因子は最高で約2倍に向上した。
また熱電モジュールの出力を高電圧化するため、熱電素子の断面積を小さくすることで、モジュールの素子数を増やしている。素子配列技術も改良し、モジュールの内部抵抗を20%低減。これにより、加熱温度800℃時におけるモジュールの発電出力は、同サイズの従来モジュールと比べて、2.2倍高い4.1Wになったとしている。
高温耐久性の改善では、n型熱電素子に添加物を加えることで、加熱・冷却サイクルによるひびの発生を抑制できることを発見した。従来の参加モジュールでは、加熱・冷却サイクル中にn型熱電素子に発生する微細なひびにより、発電出力が最大20%減少するケースがあったからだ。添加物を加えた熱電モジュールは、600℃と100℃の間で加熱・冷却サイクルを200回以上繰り返しても、発電出力の劣化は見られなかったとする。
空冷技術に関しては、空冷でも水冷式並みに効率よく冷却するため、作動液体の蒸発潜熱を利用するヒートパイプを活用している。作動液体の蒸発により、熱電モジュールを効率よく冷却できる。ヒートパイプ、放熱フィン、空冷ファンで冷却用ラジエーターを構成し、熱電モジュールと組み合わせて、空冷式熱電発電装置を製造。加熱温度が500℃の場合、2.3Wを出力できるという。同じ熱電モジュールの水冷時の出力は、同じ条件で2.8Wであるため、水冷式の80%の発電出力を持つ空冷式発電装置の開発を実現した。
開発した熱電発電装置を用いて、1〜3Wで作動する電子機器の動作を確認したところ、加熱温度が200℃に達するとLEDライトが点灯。400℃になれば温度センサーによる計測とデータのワイヤレス送信、Webカメラによる動画撮影とワイヤレス転送、スマートフォンの充電が可能。500℃で加熱すればワンセグテレビを充電、視聴できたとする。
今後は、開発した熱電発電装置の実証実験を行い、工業炉や焼却炉からの排熱回収用や非常用電源として、2年以内の実用化を目指すとした。
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