世界記録の効率16.2%、太陽光で水素製造蓄電・発電機器

太陽光を利用して水素を製造できるデバイスの研究開発が進んでいる。米NREL(国立再生可能エネルギー研究所)の研究グループは、これまでの世界記録を2.2ポイント上回る効率16.2%のデバイスを開発した。

» 2017年04月17日 09時00分 公開
[陰山遼将スマートジャパン]

 米NREL(国立再生可能エネルギー研究所)の研究グループが、太陽電池を利用した水素製造の効率で世界記録を更新した。これまでの14%を2.2ポイント上回る16.2%を記録したという。

研究チームのMyles Steiner氏、John Turner氏、Todd Deutsch氏、James Young氏 出典:NREL

 これまでの世界記録だった14%は、ドイツ研究センターヘルムホルツ協会の組織であるHelmholtz-Zentrum Berlin(HZB)、イルメナウ工科大学(TU Ilmenau)、フラウンホーファーISE(Fraunhofer ISE、太陽エネルギーシステム研究所)、カリフォルニア工科大学(Caltech)の混成チームが2015年に記録した。

 利用したのはIII-V族半導体(III族元素とV族元素を用いた半導体)と呼ばれるタンデム構造の太陽電池だ。変換効率は14%は当時、NRELが持つ12.4%という世界記録を17年振りに打ち破る成果だった。

 今回、その世界記録を更新したNREL。利用したのはNRELが開発した反転変性多接合(IMM)太陽電池だ。従来のヒ化ガリウム(GaAs)層をインジウムガリウム砒素(InGaAs)に置き換え、デバイスの効率を大幅に改善することに成功した。また、デバイスの上に非常に薄いアルミニウムインジウムリン(AlInP)の「窓層」を堆積させ、次にGaInP2の第2の薄層を堆積させた。これにより腐食性電解液からセルを保護し、効率の低下を防ぐことができるという。

 NRELでは、こうした太陽光を利用して水素を製造できるデバイスが普及するためには、水素の製造コストを1kg当たり2ドルまで下げる必要があると述べる。この目標に向けて今後も変換効率の向上や、デバイス寿命の向上に取り組むとしている。

 なお、今回の成果は科学誌「Nature Energy 」のオンライン版に2017年3月13日(現地時間)に掲載された。

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