電力を輸出入する時代へ、世界最大市場の北東アジアに日本とアジアをつなぐ国際送電網(1)(1/4 ページ)

いまや通信と同様に電力の領域でも多国間のネットワークが広がる。日本や中国を含む北東アジアに国際送電網を構築するプロジェクトが動き始めた。世界最大の電力市場に新たな競争がもたらされるのと同時に、各国をつないだ広域ネットワークで電力の安定供給を図りながら、自然エネルギーの電力を一気に拡大できる。

» 2017年05月22日 07時00分 公開
[自然エネルギー財団スマートジャパン]

 日本の送電網を他の国と接続することなど、最近まで想像できただろうか。電力市場を変革する国際送電網の構想が、いよいよ日本を巻き込む形で現実味を帯びてきた。中国や韓国、ロシアを加えた巨大な電力市場が国際送電網を通じて形成される日は遠くない。

 すでに日本の周辺の海底には、数多くの通信ケーブルが張りめぐらされている実績がある(図1)。意外に知られていないことだが、各国の領海の外側でも、海底ケーブルを敷設する自由が国際条約で認められている。日本の周辺に海底ケーブルを敷設する場合には、韓国やロシアとの間に排他的経済水域が存在するが、二国間で合意を得ることができれば、その国際条約上の問題は生じない。

図1 日本周辺の海底通信ケーブル。出典:TeleGeography Submarine Map 2016

 海底ケーブルを敷設する経験は日本企業の間にも蓄積されている。通信ネットワークと同様に電力ネットワークを周辺各国とケーブルでつなぐこと自体は、いまや技術と法制度の両面で可能な状況にある。

 アジアに国際送電網を展開する構想は21世紀に入って始まった(図2)。最も早く着手したのは、韓国とロシアの研究機関による「北東アジア電力システム統合プロジェクト」である。2002年に開始した共同プロジェクトの中で、ロシアの極東地域から北朝鮮を経由して韓国まで、国際送電網をつなぐ計画の実現性を検討した。

図2 アジアにおける国際送電網構想の例。出典:Electric Power Grid Interconnections in North Asiaなどの情報をもとに自然エネルギー財団が作成

 さらに日本や中国を加えた国際送電網の構想として、自然エネルギー財団が「アジア・スーパーグリッド」を2011年に提唱した。風力発電と太陽光発電の導入ポテンシャルが大きいモンゴルを電力の供給源として、中国・韓国・ロシア・日本を国際送電網で結ぶ(図3)。

図3 「アジア・スーパーグリッド」の実現イメージ。出典:自然エネルギー財団
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