クラウド配電管理で再エネ増加に対応、日立がスロベニアで実証エネルギー管理

NEDOと日立が再可能エネルギーの導入拡大を目指すスロベニアで、中小規模配電会社向けのクラウド型統合配電管理システムの実証を行う。コストを抑えつつ、適正電圧の維持や停電時間の短縮などを実現する仕組みの構築を目指す。

» 2018年05月10日 09時00分 公開
[長町基スマートジャパン]

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と日立製作所は、スロベニアの国営送電事業者であるELESと共同で、同国内に構築を進めてきた中小規模の配電会社向けのクラウド型統合配電管理システム(DMS)が完成したと発表した。2018年5月末から試運転を行い、7月末から運転を開始する。

 スロベニアのエネルギー政策では、2020年までに最終エネルギー消費量の25%を再生可能エネルギーにし、エネルギー効率を20%改善する目標を掲げている。2016年11月4日に発効した地球温暖化対策の新たな国際枠組みである「パリ協定」も批准した。

 一方スロベニアは製造業が盛んで、2004年のEU加盟後は域内有数の高い成長率と豊かな生活水準を誇り、電力需要が増加しているという。しかし、配電会社の設備は老朽化が進みつつあり、設備更新に向けた投資費用の増加が予想されている。このため今後、再生可能エネルギーの導入拡大や、電力需要の増加に伴い発生することが想定される電圧変動、停電、過負荷、予備力確保などの問題を解決する、より高度で経済的な配電系統の管理技術が求められていた。

 こうした配電系統の管理技術の開発を目的に、2016年11月25日にNEDOとスロベニアの経済開発・技術省、インフラ省は、スマートコミュニティー実証事業開始に向けた協力覚書(MOC)ならびに議事録(MOM)を締結。同時にNEDOは、ELESと共同で開始するクラウド型統合配電管理システム構築に関する実証事業に合意し、基本協定書(MOU)を締結した。委託先として日立製作所およびみずほ銀行を選定し、2019年12月までの予定で正式に実証を開始した。

 実証事業では、スロベニアの配電会社2社の配電系統に、クラウド型サービスにより初期投資および保守費用を抑えたDMSを構築。適正電圧の維持や停電時間の短縮など、スロベニアや同様の課題を持つEU諸国での課題を解決する機能の実証、それを用いた中小規模配電事業者向け事業モデルの構築を目指す。

実証事業のイメージ 出典:NEDO

 具体的には、仮想化のアーキテクチャを採用した複数の配電会社が利用可能なクラウド型統合DMSを開発し、スロベニアの首都リュブリャナ郊外にある通信会社Stelkom社のデータセンターにサーバを集約・設置し、2社の配電会社に対して統合DMSのサービスを提供する。

 統合DMSには、基本機能に加え再生可能エネルギー大量導入の阻害要因である電圧変動を緩和するVVO(Volt/Var Optimization、電圧・無効電力最適化)機能や、停電時間を最小化する配電系統向け事故監視機能、配電網への設備投資を延伸するためのDR(デマンドレスポンス)機能などの高機能を実装した。統合DMSから監視制御を行うために、配電網に開閉器/RMU(Ring Main Unit、地中用開閉器)、OLTC(On Load Tap Changer、負荷時タップ切換器)付き変圧器、計測器なども設置した。

 今後、日立とELESでは、同実証の分析・評価結果をもとに、今後、クラウド型DMSをサービス形態で提供するビジネスモデルの他地域での展開について検討する。

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