太陽光関連の倒産は底打ちか、電力事業者の新設が3年ぶり増加自然エネルギー

東京商工リサーチは2017年に設立された電力事業を手掛ける法人についての調査結果を公表。全体では3年ぶりに前年を上回る増加数に。再生可能エネルギー関連では太陽光関連の事業者数が同じく3年ぶりに増加した。

» 2018年08月13日 07時00分 公開
[スマートジャパン]

 東京商工リサーチが実施した2017年「電力事業者」の新設法人調査によると、2017年(1〜12月)に新しく設立された電力事業を手掛ける法人の数は前年比11.2%増の1988社で、3年ぶりに前年を上回った。同時期に設立された全ての新設法人数は同3.1%増の13万1981社で、電力事業者の新設数は全体平均を上回る結果となった。

電力事業者の新設法人数の推移 出典:東京商工リサーチ

 利用エネルギー別でみると、設立された1988社のうち、太陽光発電関連の新設法人が1146社(同8.6%増)で、3年ぶりに増加した。2015年から2年連続の減少に歯止めがかかった格好だが、増加率は一桁台で底打ちレベルにとどまった。

 一方「風力」は321社(同36.0%増)、「バイオ」は186社(同52.4%増)と大幅に増加した。太陽光発電の「再生可能エネルギーの固定価格買取価格(FIT)」による買取価格が下がり、相対的に太陽光以外のエネルギーに注目が高まっていることが背景にあるとみられる。ただ、立地条件や設置コストの兼ね合いなどから、太陽光ほどの設立数には至っていない。

利用エネルギー別にみた電力事業者の新設年次推移 出典:東京商工リサーチ

 資本金別では、「1百万円未満」が974社(構成比48.9%)で、約5割を占めた。これを含めた「1千万円未満」(その他除く)が1800社で、全体の約9割(同90.5%)を占めている。

 地域別では関東の1092社(構成比54.9%)で、次いで、九州の244社(同12.2%)、中部の175社(同8.8%)、近畿の165社(同8.3%)と続いた。

 増加率が最も高かったのは、関東で前年比25.6%増となった。東京都は2016年が557社だったが、2017年は719社が設立され、増加率を押し上げた。

 法人格別で最多は、合同会社の1195社(前年比24.8%増)。過去最多を記録した2014年の1824社から34.4%減少したが全体の60.1%を占め、4年連続で構成比トップとなっている。合同会社は、株式会社より設立コストが安く、決算公告も不要で、株主総会を開催する義務がない。FITの導入以降、太陽光関連事業者が同一住所地に複数の合同会社を設立するケースが相次いだが、太陽光ビジネスブームの落ち着きによる変化が見え始めているとみられる。

 一方、2018年上半期(1〜6月)「太陽光関連事業者」の倒産件数は43件(前年同期比6.5%減)、負債総額は153億3700万円(同13.0%減)で、件数・負債ともに前年同期を下回った。件数が前年同期を下回るのは8半期ぶり。FIT買取価格の段階的な引き下げにより、小規模な太陽光パネルなど発電設備の販売、設置工事業者の倒産が相次いでいたものの、2017年下半期を境にピークアウトした可能性があるようだ。

 これまで国内の再生可能エネルギーは太陽光偏重だったが、FITの段階的な引き下げに伴い、太陽光以外のエネルギーへの注目が高まっている。既に風力やバイオマスの利用を念頭に置いたとみられる法人の新設も増え、今後も太陽光以外のエネルギー利用を前提とした法人設立は増加する可能性があるとしている。

 太陽光発電は他の再生可能エネルギーより初期投資が安価で、これまで多くの企業が設立されてきた。しかし、バイオマスなどのエネルギーは初期費用がかさむため、資金制約を受けて参入できる業者が限られ、寡占化が進行する事態も想定されるとする。

 また、送電線の空き容量の問題で送電網に接続できない「系統制約」もクリアされていない。電力事業者の新設法人数は、こうした課題の解決状況やFIT政策の動向に大きく左右される状況が続くとみられるとした。

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