ソーラーシェアリングはどこまで広がったか、導入件数とその実態ソーラーシェアリング入門(2)(2/2 ページ)

» 2018年09月25日 07時00分 公開
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条件を満たせば一時転用許可が10年以内に

 ソーラーシェアリングを巡る制度は、2016年4月に農水省の通知のマイナーチェンジがあってから久しく動きがありませんでしたが、2018年5月15日にこの通知の内容が大きく変更され、「30農振第78号」という新しい通知が発出されました。この通知の発出と同時に、これまでの「24農振第2657号」は廃止されています。

 今回の制度改正で最も大きなトピックは、これまで3年以内とされていた一時転用許可の期間が、一定の条件を満たすと10年以内にまで延長されるようになったことです。この条件というのは、以下の3点を満たすことです。

  1. 「担い手」が所有している農地又は利用権等を設定している農地で当該担い手が下部農地で営農を行う
  2. 「荒廃農地」を活用する
  3. 農用地区域以外の第2種農地や第3種農地を活用する

 その他の条件については特段の変更はなく、「農作物の生育に適した日照量が確保されていること」や「農業機械等を効率的に利用するため支柱の高さが2メートル以上確保されていること」など、従来の通知にあった条件が維持されています。また、この10年以内への一時転用許可延長は既存のソーラーシェアリングが許可の更新を行う際にも適用されるため、例えば既に「荒廃農地」を活用している設備であれば、次回の更新では10年以内の一時転用許可が適用されます。

 通知改正を受けて、ソーラーシェアリングの特徴を改めて整理すると、農地に支柱を立てて上空に太陽光パネルを設置するという形態から、栽培する作物に応じて最適な日射量を確保する太陽光パネルの配置にすること、効率的に農業用機械などを用いた作業のできる空間を確保すること、そして簡易に撤去できる構造とすることなどが要求されています。

 この中で明確に数値が定められているのは、先に述べた「農業機械等を効率的に利用するため支柱の高さが2メートル以上確保されていること」という点と、「収穫量がおおむね2割以上減少しないこと」の2点になります。

 それ以外に、「パネルの角度、間隔等からみて農作物の生育に適した日照量を保つための設計となっており、支柱の高さ、間隔等からみて農作業に必要な農業機械等を効率的に利用して営農するための空間が確保されていると認められること」や、「位置等からみて、営農型発電設備の周辺農地の効率的な利用、農業用用排水施設の機能等に支障を及ぼすおそれがないと認められること」など、実際に制度を運用する都道府県や市町村の農業委員会に判断の裁量が委ねられている条件もあります。

著者プロフィール

馬上 丈司(まがみ たけし)

1983年生まれ。千葉エコ・エネルギー株式会社代表取締役。株式会社エコ・マイファーム代表取締役。一般社団法人ソーラーシェアリング推進連盟代表理事。千葉大学人文社会科学研究科公共研究専攻博士後期課程を修了し、地方自治体における再生可能エネルギー政策に関する研究により、日本初となる博士(公共学)の学位を授与される。専門はエネルギー政策、公共政策、地域政策、農業政策。2012年10月に大学発ベンチャーとして千葉エコ・エネルギー株式会社を設立し、国内各地で太陽光・小水力・バイオマスなどの自然エネルギー源による地域活性化事業に携わる。2013年よりソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)に取り組み、国内外で200件以上のコンサルティング実績を持つ。2018年4月に一般社団法人ソーラーシェアリング推進連盟の代表理事に就任し、各地で講演活動等も行いながらソーラーシェアリングの普及に尽力している。


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