ELYZAを含め、現在国内外でLLMの開発競争が激化している。現状では国外プレイヤーが高性能のモデルを提供していく場合が多いが、国内プレイヤーはこれに一矢報いることはできるのか。
OpenAIはLLM開発に対して、1兆円規模の予算で開発を進めているという。曾根岡代表も、これを聞いたときにはELYZA社内で「勝てないんじゃないか」という声が出たと振り返る。しかし、曾根岡代表は「諦めずに取り組んだからこそ、GPT-4を上回る性能を持つLLMを開発できた」とし「われわれのポジションとしては『追い付けないと思ったら試合終了』だと思っている」と、開発を続ける意義を説明する。
一方で、国外プレイヤーへの勝ち筋については「もう少し考える必要がある」と曾根岡代表。LLMの性能はどんどん上がっているように見えるが、曾根岡代表の体感では「LLMトップラインの成長性は、実はそんなに差分を感じないと思っている」と話す。
その上でELYZAが模索していくのは、特化型LLMの可能性だ。「国外プレイヤーが公開するグローバルモデルに対して、日本の法律や確定申告の質問をしても答えられない場合が多い。じゃあそれができるLLMをつくれれば、日本ユーザーに合ったLLMを提供できるし、勝ち筋の一つになり得るのでは」(曾根岡代表)
曾根岡代表は「われわれが今考えているのは『諦めないというスタンス』と『特化型で、よりユーザーにフィットしたLLMをつくっていく』という2点」とまとめて、国外プレイヤーと競争していく上での方向性を示した。
ELYZAが今回、Metaのオープンモデルを利用したように、世界各国の各社がオープンモデルを公開し、ビジネスや研究利用を促している。一方でモデル提供元の各社には、独自のエコシステムの構築を進めていく動きも見られる。このような状況に対して、ELYZAはどのような戦略を今後取っていくのか。
「今までは研究・開発の競争が起こり、それをAPIで公開していく動きが活発だった。私個人の感覚では今後、アプリケーション領域での競争が活発になっていくのではと考えている。OpenAIが6月中旬ごろ、会議向けアプリを開発する企業を2社買っており、このことからも“よく使われるアプリ”をどうやって生み出していくのかが競争のポイントになるのではないかと見立てている」(曾根岡代表)
ただ、この観点からするとELYZAによる今回の発表は後れを取っている部分もあるとも言及。ELYZAでは今後、LLMの社会実装にも力を注ぎ、大きなニュースとして今後発表できるように引き続き取り組んでいくと方針を示した。
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